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cinema staffとアルカラの“長い旅”の始まり スプリットツアー初日飾った高揚感に満ちたステージ

2018年08月12日 12:22  リアルサウンド

リアルサウンド

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  cinema staffとアルカラが、スプリットツアー『Split EP『undivided E.P. 』RELEASE TOUR ~A.S.O.B.i~』の初日公演を8月3日、東京・恵比寿LIQUIDROOMにて開催した。


 このツアーは、今年6月に彼らがリリースしたスプリットCD『undivided E.P.』を携えて行われるもの。会場に着くと、ステージ奥のバックスクリーンには2バンドのロゴを重ね合わせたフラッグが投影され、彼らお気に入りのRed Hot Chili Peppersが大音量で流れていた。


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 出順は会場ごとに異なるらしく、この日はアルカラが先攻だ。客電が落ち、メンバーが次々とステージに登場する中、首にトレードマークのタンバリンをかけた稲村太佑(Gt/Vo)が最後に現れ、まずは2ndアルバム『BOY NEXT DOOR』(2009年)の冒頭を飾る楽曲「はじまりの歌」からライブはスタートした。


 疋田武史(Dr)が踏み鳴らすキックの重低音に圧倒される間もなく、イントロからドラマティックな展開が待ち受ける。下上貴弘(Ba)は低い位置で構えたベースをグルグルと回転させながら、自らもステージ狭しと動き回りオーディエンスを煽りまくっている。


 「cinema staffとアルカラの、それはそれは長い旅が始まるぜ!」と、ツアーの幕開けを高らかに宣言した稲村は、突き抜けるようなハイトーンボイスでオリエンタルなメロディを熱唱した。


 その後もスプリットCD『undivided E.P.』収録曲を交えた楽曲を、畳み掛けるように演奏。「すべての潤いを求める女性に、この曲を!」と稲村が叫んで始まった「サースティサースティサースティガール」では、サポートギタリストとの緻密なアンサンブルを組み立てる。そこにうねるようなベースが絡まり、レッチリも「かくや!」と言わんばかりの屈強なグルーヴが生み出された。


 アルバム『CAO』(2014年)収録の「アブノーマルが足りない」では、デジタルディレイを駆使したギターリフ、キメやブレイクを随所に散りばめたプログレッシブなリズムの上で、昭和歌謡を思わせるような哀愁のメロディが歌われる。その強烈なコントラストこそが、アルカラの真骨頂と言えるだろう。


 続いて、今年結成15周年を迎えたcinema staffが登場し、テレビアニメ『進撃の巨人』の後期エンディングテーマでもお馴染み「great escape」からスタート。辻友貴(Gt)による、あの印象的なトレモロギターが宙を切り裂く中、久野洋平(Dr)の機関銃のようなドラミングと、三島想平(Ba)による強烈なダウンピッキングが暴れまわる。


 冒頭からヒリヒリとした演奏でオーディエンスを熱狂させる中、飯田瑞規(Gt/Vo)の囁くようなスモーキーボイスが、メランコリックなメロディを歌い上げる。身を振り絞るように歌う稲村とは対照的なボーカルスタイルだが、バンドサウンドの中に埋もれることなく歌声がしっかりと前に出ていたのが印象的だった。


 アルカラと同様、スプリットCD収録曲やライブで人気の曲で構成されたメニュー。後半、アルカラの「チクショー」をカバーすると、〈チクショー、チクショー〉の掛け合いコーラスと共に、フロアではモッシュが巻き起こる。最後は新曲「first song(at the terminal)」を披露し、変拍子を含む複雑な曲構成を一糸乱れぬプレイで駆け抜ける。ステージ袖で見ていた稲村が、思わず客席にダイブするシーンもあった。


 アンコールでは、cinema staffとアルカラのメンバー全員がステージに登場。「夏のビーチに行くなら、どんな格好?」というコンセプトのもと、パナマ帽やサングラス、Tシャツなど「それらしい」ファッションにそれぞれが身を包んでいた。ところが稲村だけが、何故かワンピースに麦わら帽子というキテレツな格好で会場を沸かせていた。


 総勢8人で演奏したのは、もちろん2バンドのコラボ曲「A.S.O.B.I.」。2014年に沖縄、台湾と一緒にツアーした時の思い出や、cinema staffの過去曲からの引用を詰め込んだ稲村のペンによる楽曲で、彼が現地で買ってきたオモチャから流れるメロディを、サビにそのまま当てはめるといった遊び心に溢れている。最後はそのメロディを全員でシンガロングし、この日の公演は全て終了した。


 10月1日の岐阜県・柳ヶ瀬Antsまで、全国で14公演が行われるという本ツアー。良き友であり、良きライバルでもある2バンドの、ほどよい緊張感と和やかなムードが絶妙なバランスの、高揚感に満ちたイベントだった。(黒田隆憲)