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山本彩は“アイドルが憧れるアイドル”であり続けたーー『ANN』とエッセイ集から卒業の背景を紐解く

2018年08月12日 07:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 山本彩が、NMB48からの卒業を発表し、もうすぐ2週間が経とうとしている。


参考:山本彩は“48グループ”で異例のアイドルだった? NMB48に与えた功績とソロ活動への期待


 7月30日、卒業発表の場となった中野サンプラザホールでの『NMB48 LIVE TOUR 2018 in Summer』では、「私が離れたほうがNMB48の起爆剤になる」「若いメンバー、新しいメンバーにこれからのNMB48を作って欲しい」とし、今後のグループの未来を考えた上での卒業であることを語っていた山本彩。翌週、8月6日の月曜レギュラー『アッパレやってまーす!』(MBSラジオ)では、卒業発表後初めての生出演ということで山本の発言が期待されたが、スケジュールの都合のため、番組終盤に電話出演という形で次週へ持ち越しに。8月8日、『AKB48のオールナイトニッポン』(ニッポン放送)では、NMB48兼任時代からの盟友であり、“横山本”として公私ともに仲の良い横山由依、山本の「出て欲しい」というオファーで急遽出演が決まった高橋朱里、そして山本の3人で発表後としては初めて卒業について語るタイミングとなった。


 まずは、気になる卒業を考えていた時期については、様々な事情やスケジュールの問題があり、今回の発表になったと話しながらも、2016年の『第8回AKB48選抜総選挙』を最後に、2017年、2018年と総選挙に出なかった2年間で卒業と向き合い、今年5月にリリースされたAKB48の52枚目シングル『Teacher Teacher』の活動時期には卒業を決めていたという。また、山本の卒業については関係者もごく一部のみが知っていたトップシークレットだったらしく、メンバーも横山や高橋のほか、NMB48では“これからを任せられるメンバー”として吉田朱里などに卒業を相談していた。


 卒業コンサートは、10月27日に大阪・万博記念公園東の広場に決定。グループ史上最大規模かつ、初の野外会場公演、「何度でも」のカバーで山本とも縁深いDREAMS COME TRUEは2016年に『MBS presents 私のドリカム THE LIVE in 万博公園』で3万5千人を動員している会場だ。「365日の紙飛行機」がそうであるように、NMB48だけにとどまらず、AKB48グループを代表する顔として活躍してきた山本は、「ユニット曲」「自分の曲だけど歌ったことない曲」「AKB48兼任時代に思い入れのある曲」「センター曲」と、やりたい曲、やるべき曲は1日で終わらないくらいにあるが、「最後の曲は決めている」と自信たっぷりに話していた。


 今回、山本の卒業発表にあたり、彼女が2017年3月に出したエッセイ集『すべての理由』(幻冬舎)に改めて目を通した。グループのキャプテンであり、シンガーソングライターとしてすでにソロとしても成功している山本。歌唱力、ダンスパフォーマンス、バラエティ……とあらゆる点において隙のない彼女は、“実人気”と呼ばれる2016年の『AKB48夢の紅白選抜』で1位。後輩メンバーはもちろんのこと、先輩である指原莉乃も「あんなに可愛くてあんなに才能ある人がよくここまでいてくれたなって本当に思うの!」とツイートするほどに、“アイドルが憧れるアイドル”であり続けた。


 『すべての理由』第0章「山本彩という人」は、「克己心。弱い心に、打ち克つ心」という言葉から始まる。分かって欲しいけれど、全ては知られたくない。自信はないけど、自分に期待はしている。内気で、人見知りでジレンマの塊のような山本は、その反動にグループのメンバー、そしてファンへの思いは人一倍に強い。昨年、11月にNHKホールで開催した『山本彩 LIVE TOUR 2017~identity~』は、ファンがいてこその“山本彩”であることを示したツアーだった。(参考:山本彩、特別な場所・NHKホールで見せたシンガーソングライターとしての成長)。アンコールで披露された「メロディ」の〈いまここにいる君へ/大好きなあの人へ/私のメロディを/もっと届けたい〉という歌詞が、これから続く山本のシンガーとしての未来を想像させる。


 『すべての理由』第7章「私が卒業する時は」には、「グループへの執着から卒業する時」とある。これは『ANN』においても触れていたが、グループに8年在席していた山本は、“アイドル”という一面に甘えや依存を抱き活動していたという。今後は、“山本彩”として一人で戦っていかなければならない。山本がNMB48を卒業する時、アイドルを辞める時は、グループに追い風を吹かせるとともに、彼女が弱い部分と向き合い、大きな一歩を踏み出す瞬間だ。(渡辺彰浩)