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サザンオールスターズ『海のOh,Yeah!!』は一家に1枚の作品に 老若男女に愛される桑田佳祐の魅力

2018年08月11日 10:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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参考:2018年8月13日付週間アルバムランキング(2018年7月30日~2018年8月5日・ORICON NEWS)


 夏本番の今週のチャート。RYUJI IMAICHI(from 三代目 JSB)や赤西仁など初登場アーティストの健闘が目立ちますが、他を引き離して目立っているのはサザンオールスターズ。最新シングル「壮年JUMP」や大ヒットシングル「TSUNAMI」、「HOTEL PACIFIC」、さらには3曲の新曲も収録したベスト的企画盤『海のOh,Yeah!!』が初登場1位。初週で32.5万枚という数字、もはや格が違います。


(関連:星野源、サザン新曲「壮年JUMP」を語る 「本当にいい歌詞なんですよね」


 改めて考えると、サザンのファン層ってなかなかイメージしにくいもの。桑田佳祐は“エッチなおじさん”キャラを積極的に押し出していますが、そのわりに音は下劣ではなく全然古くもない。同世代の同性に向けた音楽だとは到底思えません。というか、ちょっとしたセクハラ発言も“古い考えのダメジジイ”認定されて大炎上につながる昨今、ここまでおおっぴらに“エッチなおじさん”が許されているのは桑田佳祐くらいでしょう。本当に老若男女、全国民から愛される稀なシンガーだなと思います。


 『海のOh,Yeah!!』は20年前に発売された20周年ベストアルバム『海のYeah!!』の続編で、1997年から2018年に発売された楽曲が収録されています。アルバムに収録された一番古い曲は「01MESSENGER~電子狂の詩~」ですが、このとき桑田佳祐は発売されたばかりのRadiohead『OK Computer』に激しく呼応し、インターネット社会を風刺するようにシングルを書き上げています。当時40代だった彼が、60歳になって〈EDMたぁ何だよ〉とユーモラスに歌い出すとはまったく想像できませんでしたが、本当にそうなったから言葉もない。この人は20年前から、いやデビューした40年前からずっと最新の洋楽を追い続け、それを日本語のポップスに翻訳してきたわけです。しかも必ず自分らしい遊び心を添えて。これってどう考えても奇跡的。


 なお、32.5万枚という数字を見て、最初は「比較的ファンの年齢層が高い→DL文化に馴染みがない→パッケージを購入」という流れを思い浮かべたのですが、よく見れば今週7位には1998年発表の同企画盤『海のYeah!!』までがランクインしています。セールスは約9000枚。これを機に聴いてみよう、と作品を手にした人たちが1万人弱いるわけですね。


 パッと特定できないサザンのファン層。それはつまり、だいたいの日本人、と言っていいのでしょう。名曲がたっぷり詰まった『海のOh,Yeah!!』。まさに一家に1枚の作品です。(石井恵梨子)