2018年08月11日 09:02 弁護士ドットコム
日本におけるアマゾンへの市場進出を目指す中国の個人や中小企業向けセミナーで、「自作自演」によるレビューの偽装が推奨されているという情報がツイッターで広がり、話題になった。
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この情報によると、あらかじめ用意した50以上の評価用アカウントで、自分で出したショップの商品を購入。その後、すべての評価用アカウントを使って、ショップに星5個をつける。こうしてショップの信用度を上げ、Primeマークを取得し、顧客を増やすことが推奨されているという。
さらに、競合他社の商品に「届かない!」「品質に問題がある!」などの嘘レビューを書き、星1個の低評価をつけることで、他社の信用を下げるという。
このようなやり方に法的問題はないのか。アマゾンにも責任はないのか。上田孝治弁護士に聞いた。
「アマゾンで買い物をする利用者にとっては、実際に商品を購入した人が、利害関係なしに商品の評価をするレビューがあることがアマゾンを信頼して買い物をするうえで不可欠です。にもかかわらず、ショップが自作自演でレビューを偽装することは、実質的には広告であるにもかかわらず、客観的な評価を装うものであり、購入者に対して誤った印象を与えることになります」
どのような法律問題になるのか。
「景品表示法の不当表示(優良誤認又は有利誤認)にあたる可能性があり、仮に不当表示ということになれば、ショップが、今後同様の違反行為を行わないことなどを内容とする『措置命令』の対象となります。
もっとも、自作自演のレビュー偽装というだけで直ちに景品表示法の不当表示になるわけではなく、商品やサービスの内容や取引条件について、実際のものよりも著しくいいものと見せかけていることが必要です」
アマゾン自体の責任についてはどう考えればいいのか。
「景品表示法の不当表示の責任を負うのは、あくまでも『自分の』供給する商品やサービスの取引について不当表示を行った事業者だけですので、仮にレビュー偽装が不当表示にあたるとしても、アマゾンのような媒体自体が景品表示法の責任を負うわけではありません。
しかし、レビュー偽装の場合に、アマゾンに一切の法的責任が生じないというわけでもありません。
例えば、自作自演による虚偽のレビューが記載してある商品について、レビューを信じて実際に商品を購入したところ、レビューの内容と全く異なる商品であったというような場合で、しかも、アマゾンがそのレビューが虚偽であることを知りながら、合理的期間を超えて放置していたといったような特別の事情があれば、例外的にではありますが、アマゾン自身が購入者に対する損害賠償責任を負う可能性があります」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
上田 孝治(うえだ・こうじ)弁護士
消費者問題、金融商品取引被害、インターネット関連法務、事業主の立場に立った労働紛争の予防・解決、遺言・相続問題に特に力を入れており、全国で、消費者問題、中小企業法務などの講演、セミナー等を多数行っている。
事務所名:神戸さきがけ法律事務所
事務所URL:http://www.kobe-sakigake.net/