中部大学工学部ロボット理工学科の平田豊教授は、地上の重力である1Gを上回る「過重力」状態にすると、人間の運動学習能力の一部が高まることを確認した。7 月下旬に同大学が発表した。
人気アニメ「ドラゴンボール」には、主人公の孫悟空が「重力室」で修行するシーンが登場する。同大学は「重力室の効果を再現した」としている。
「新たな運動能力を身に付けるための効率的練習環境を整える参考になる」
実験では、遠心力を利用する過重力付加装置を使った。装置を使うと、通常の重力と遠心力を合わせ、2Gの重力加速度を体軸方向に付加することができる。
被験者4人は、2Gの過重力環境下で視界が左に約17度ずれるプリズムゴーグルを装着し、タッチパネル上の赤い円を正確に指差す訓練を行った。この結果、「1Gでは正確な位置を示すまでに約60回かかったが、2Gでは約20回まで短縮できた」という。効果は実験に参加した全員に確認されたと発表している。
さらに、過重力をかける代わりに明るい視覚環境下で訓練すると、より早く学習することも確認できたという。今回の成果について中部大学は、
「アスリートに限らず一般人が新たな運動能力を身に付けるための効率的練習環境を整える参考になる。過重力を作り出すには大掛かりな装置が必要だが、練習環境の明るさは容易に調整できる。運動の学習効率に対する重力と明るさの関係を詳しく調べれば、過重力に相当する環境を明るさで再現できる」
と期待している。
実験を知った人からは、「超サイヤ人生まれちゃう」「すげえ!」と驚きの声が上がる一方で、「背が縮みそう」と、健康への影響を心配する人もいた。
研究内容は国際重力生理学会と欧州宇宙機関が、6月にオランダで共催した国際会議で採択され、口頭発表した。11月に順天堂大学さくらキャンパスで開かれる日本宇宙航空環境医学会のシンポジウムでも発表される予定だ。