夏のあいだの数か月、全国で時計を早めるサマータイム制度。政府は東京オリンピックをきっかけに今後2年で導入し、恒久的な制度化を目指すという。
安倍総理から党内での議論を直接指示されたのは、自民党の遠藤利明議員(東京五輪実施本部長)だ。8月9日の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)では、遠藤議員の独占インタビューを放送。遠藤氏は、「『2年間限定』という報道は間違いで、むしろ『2年後』からスタートしたい」と、先行して流れた情報を訂正し、
「恒久化しか考えていないです。やるんなら恒久化しなきゃ意味がない」
と断言した。(文:okei)
「世界の主要な国はみんなやっている、日本にできないことはない」
制度の詳細は今後検討するが、5月のGW明けから9月あたりにかけて1~2時間、時計を早める案も明かした。早くて今年秋の臨時国会での成立を目指し、2020年にもスタートさせたい考えだという。
サマータイムは、省エネ効果やサラリーマンが余暇を有意義に使えるメリットがあるとされている。経済効果は7500億円との試算もあるが、日本では戦後間もない頃に導入したが数年で廃止。最近も奈良県庁で試験導入したが、昨年に廃止している。
しかし遠藤議員は、今年の暑さと働き方改革によって、「機は熟してきた」と見ており、「そこに、五輪の暑さ対策が必要ですから。これなら一体として進めるのにいい」として、
「世界の主要な国はみんなやっているわけで、日本にできないってことはない」
「(省エネで)低炭素社会をつくりたい。それをオリンピックのレガシーとしたい」
と、導入の必要性を語った。サマータイムは70の国と地域で導入されており、定着しているアメリカでは、「忙しかった父にとって子どもと遊ぶ時間が増えた」、「体を慣れさせるのが大変だから嫌い」など、賛否両論ある。
家庭の電気消費は増えて「可処分所得が減る」と懐疑派の予測
番組内でも意見が分かれた。解説の山川龍雄氏(日経ビジネス編集委員)は懐疑的な意見だった。
「先進国がやっているんだから日本も習って、という話がありますが、アジアではどこもやっていないんですよ。日本はアジアの一員でもあるわけです」
として、「亜熱帯になりかけている日本でそれが向いているのかどうか。特に帰宅を早くすることが大丈夫か、本当に考えた方がいいです」と、熟考を求めた。
さらに、「低炭素社会」や「消費の引き上げ効果」についても、導入されれば「オフィスの電力需要は減っても、家庭の夕方に使うエアコンの電気消費は増える」と予測。
「可処分所得は減る。だから『サマータイム手当て』でも与えないと、本当の消費喚起には繋がらないんじゃないか」
と、自身の考えを述べた。
一方、コメンテーターで学習院大学の伊藤元重教授は導入賛成派だ。「途上国にはなかなか難しいのかもしれませんけど、日本は先進国」と話し、自身がアメリカで経験したサマータイムの良さを振り返った。「だから日本も、働き方改革とセットでやらないと意味がない」としている。
サマータイムの良さは、米駐在経験のある山川氏や大江麻里子アナも経験済みで同意したが、「だけど結局、外国の、みんながさっさと帰る文化の中に自分がいたわけですよ」と山川氏は反論する。日本を翻れば、「やはり日の光が射している間に帰りづらい会社・会社員の方々はまだまだ多いんじゃないかと思います」と懸念点を語った。
サマータイムのデメリットは、システムの改修に1000億円以上かかることや、人手不足、残業が増える、睡眠障害など多く上がっている。山川氏が懐疑的になるのも、誠実な姿勢に見えた。上手く行けば良いこともあると理解した上で、不安材料ばかり並べていることを申し訳なく思ったのか、山川氏は最後に「すいません、懐疑的で」と謝っていた。