現代美術作家のヤノベケンジさんが作成し、8月3日に福島県福島市に設置された「サン・チャイルド」の像が物議を醸している。ヤノベさんは10日、自身のサイトで「一部の方々に不快な思いをさせてしまったことについて、大変申し訳なく思っている」と謝罪した。
サン・チャイルドは、かねてから放射線をテーマに作品を作ってきたヤノベさんが2011年、東日本大震災をきっかけに作成した、高さ約6.2メートルの作品。制作された3体のうち1体が、JR福島駅近くにある教育文化複合施設「こむこむ」前に設置された。
像は、黄色い防護服を着た子どもが、右手に希望の象徴である太陽、左手に頭から外したヘルメットを持って空を見上げている、というもの。胸のガイガーカウンターはゼロを示しており、作品全体で「未来の希望」を表しているという。
「傷跡の固定化」「科学的にありえない表示のものをアートだからと設置するのは反対」
像の除幕式にも参加した木幡浩市長は6日、ツイッターに
「この作品には様々な受止め方があろうと思います。原子力災害を被ったFukushimaの県都として災害に向き合い風化させずに、希望を持って克服する~そこに復興があり、この作品はその象徴的なものと思います。ご理解をお願いします」
と投稿。これに対し、「どう見ても傷跡の固定化」「撤去してほしい」といったもののほか、
「こむこむは子どもたちの学びの場です。科学を学ぶ場でもあります。そこに科学的にありえない空間放射線量『000』の表示がついたものをアートだからと設置するのには反対します」
など反発の声が寄せられていた。
こうした声を受けヤノベさんは10日、自身のサイトに声明を掲載。ガイガーカウンターの数値は「自然放射線があるので、空間線量がゼロになることはありませんが、『原子力災害がない世界』という象徴的意味を込めた」ものであり、黄色い防護服は「巨大な問題に立ち向かう甲冑であり、宇宙服のような未来的イメージを込めた」と説明した。しかし、設置作品を見た人から様々な意見が出ていること受け、
「作品を歓迎しようとしてくれる人々との出会いが、皆様に喜んでいただけるのではないかという、思い上がりになっていたのかもしれません」
「不快に思われた方がいましたら改めてお詫び申し上げます。もとより市民の皆様を傷付ける意図は全くありませんので心を痛めております」
と謝罪した。
作品の取扱いは「福島市や関係者と話し合って決めたい」
今後の像の取扱いについては、
「しかるべき時に、直接、市民の方々にお会いしてご意見をお聞きし、お話しする機会を持つために、お伺いしたいと思っています。その中で皆様のご理解が得られたら嬉しいですが、今後の取扱いは福島市や関係者と話し合っていきたいと思います」
と述べている。
作品を展示している「こむこむ」の広報担当者は、ヤノベさんの声明に対し「正式に話が来た段階で今後のことを決めたい」とコメント。「これまでも普通に生活していて、今後も安全な未来を作っていこうというメッセージを発信するために設置した」というが、「胸の数値が誤解を与えるのではないか」「防護服を着ている人はいない」といった意見が電話やメールで寄せられているという。