ホールデン、フォード、そしてニッサンがしのぎを削る、オーストラリアの人気ツーリングカー選手権、VASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカーの第10戦が8月5~6日にシドニー・モータースポーツパークで開催され、予選ポールポジションのスコット・マクローリン(フォード・ファルコンFG-X/DJRチーム・ペンスキー)をシェーン-ヴァン・ギズバーゲンと王者ジェイミー・ウインカップ(ともにホールデン・コモドアZB/トリプルエイト・レースエンジニアリング)が逆転し、レッドブル・レーシング・オーストラリア(RBRA)がナイトレースでワン・ツー・フィニッシュを飾った。
複数回にわたる事前テストが重ねられ、照明設備や観客の視認性を重点的にチェックしてきたシドニーでの1戦が、いよいよナイトレースという形で実現。レギュラーイベントでは週末2ヒート制を採用するVASCだが、今回の“シドニー・スーパーナイト300”ではタイムスケジュールに即して1発勝負のレースフォーマットを採用しての1戦となった。
その予選でポールポジションを獲得したのは、もはや今季の定位置となりつつあるマクローリンで、シェルVパワー・レーシングのフォード・ファルコンがグリッド最上位を確保。そのままレース序盤を支配する安定したスピードを披露してみせる。
77周のレースでサードスティントまで首位を快走したマクローリンに対し、フロントロウスタートのチームメイト、ファビアン・クルサードは序盤にウインカップに捕まると、そのまま徐々に遅れる展開となり、代わって優勝争いに加わってきたのはSVGことシェーン-ヴァン・ギズバーゲンと、同じくトリプルエイト勢の大ベテラン、クレイグ・ラウンズ(ホールデン・コモドアZB)。
とくに9番グリッドからスタートしたラウンズは、今季限りでレギュラーシートを降りると表明したドライバーとは思えぬ卓越したマネジメントで、ピットストップごとにポジションを上げて表彰台圏内を伺う走りを見せる。
そしてレースが大きく動いたのは、残り20周の時点。ホームストレートを通過して1コーナーへのブレーキングを開始したトッド・ヘイゼルウッドのフォード・ファルコンFG-Xは、闇夜の中でリヤウイングが脱落し、270km/hの速度からコントロール不能の状態でクラッシュ。このアクシデントでセーフティカー(SC)が導入されることに。
このSCのタイミングでピットへと飛び込んだSVG、ウインカップのRBRA勢に対し、マクローリンは直前に最終ピットを終えており、トラックポジションはキープしたものの、好機を活かしたレッドブル・ペアは3番手、4番手で復帰すると、残り16周のリスタートでSVGが前を行くラウンズをかわしてマクローリンのテールに迫っていく。
そしてシェルVパワー・ファルコンのリヤを突き続けて迎えた残り10周のターン4。選手権ライバルより4周だけフレッシュなタイヤのグリップをフルに活かし、マクローリンのドアをこじ開けたSVGがついに首位浮上に成功。これで力尽きたマクローリンは、3番手に浮上してきたRBRAのウインカップにも捕まり、4.2秒差の3位でフィニッシュラインを通過することとなった。
「レースで生き残るのに長い時間が掛かったし、諦めかけていたところにセーフティカーが出てきてくれたのは最高だったね」と、今季5勝目を飾った2016年王者のSVG。
「スコッティ(マクローリン)は本当に素晴らしいドライビングをしていて、まったく隙を見せなかった。何度か彼のテールをヒットしたけど、それでも破綻しなかったんだ」
「でも不運なことに、最後は彼のタイヤにいくつかのピックアップがあったかもしれない。それでパスすることが可能になったんだ。ジェイミー(ウインカップ)とチームでワン・ツーが飾れて本当に良かった」
惜しくも表彰台を逃した4位ラウンズに続き、5位にティックフォード・レーシングのチャズ・モスタート(フォード・ファルコンFG-X)、6位にニッサン・モータースポーツのリック・ケリー(ニッサン・アルティマ)が続いている。
これで選手権リーダー、マクローリンの2579ポイントに対しわずかに差を詰め89ポイント差の2位としたSVG。続く第11戦は8月25~26日に今季からカレンダー入りの"The Bend"スーパースプリントが、アデレード郊外の新設タイレム・ベンドで開催される。