2018年08月10日 10:52 弁護士ドットコム
親を扶養に入れると節税になるーー。この節税効果を期待して、親を扶養に入れたいという投稿が税理士ドットコムに多く寄せられています。ただ、扶養する側とされる側の収入によっても節税できる額は異なりますので、一概には「お得!」とは言えません。
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そこで年収600万円のAさん家庭(東京23区在住)において、70歳の親を扶養に入れた場合はどうなるのか、シミュレーションしてみました。
まずは、親を扶養に入れることができるかを確認しなければなりません。親を扶養に入れるための要件は2つ。(1)親の年間合計所得が38万円以下であること、(2)親と生計を一にすることです。この2つの要件をみたさなければ、親を扶養に入れることはできません。
年間合計所得38万円は、実際にはどれぐらいの収入のことをいうのでしょうか。まず、給与収入のみの場合と年金収入のみの場合をみてみましょう。
給与収入のみの場合:103万円以下
年金収入のみの場合:65歳未満であれば108万円、65歳以上であれば158万円以下
つまり、Aさんの親が給与収入のみで収入を得ている場合には103万円以下、年金のみで収入を得ている場合でも、158万円以下であれば扶養に入れることが可能です。
では、給与収入も年金収入もある場合はどうなるのでしょうか。この場合は、年金収入と給与収入それぞれにかかる所得を計算しなければなりません。
【年金収入にかかる所得の計算方法】
65歳未満の場合(108万円未満):年金収入ー70万円
65歳以上の場合(158万円以下):年金収入ー120万円
【給与収入にかかる所得の計算方法】
給与収入(103万円以下)ー65万円
Aさんの親に140万円の年金収入と75万円の給与収入があったとします。
(1)年金収入にかかる所得を計算すると、20万円(140万円ー120万円)
(2)給与収入にかかる所得を計算すると、10万円(75万円ー65万円)
(1)と(2)の合計は20万円+10万円=30万円。38万円以下となるので、Aさんの親を扶養に入れることができます。
一見、親と同居していなければならないようにみえますが、同居は要件ではありません。
つまり、別居でも仕送りをしていれば「生計を一にする」と認められるのです。ただし、単に仕送りをすればよいというわけではありません。生活費等と認められる金額の仕送りをしていなければ、また、仕送りを行っていると客観的に確認できる状況でなければ、「生計を一にする」と認められるのは難しいでしょう。
このほか、他の兄弟の扶養に入っている場合は扶養に入れることができず、また、青色専従者給与の対象者は扶養控除を受けられないため、注意が必要です。
では、Aさんが親を扶養することで、どれほどの節税効果があるのでしょうか。Aさんの親は70歳以上。Aさんが親と同居しておらず、仕送りをしながら別居していた場合、扶養控除額は所得税48万円、住民税38万円になります。
所得税の税率は所得によって変動します。
Aさんの家庭は年収600万円なので、所得税の税率は20%。そのため、所得税の節税効果は48万円×20%=96,000円になります。一方、住民税の税率は所得税とちがって一律10%(異なる地域もある)。住民税の節税効果は38万円×10%=38,000円になります。つまり、Aさん家庭が得られる節税効果は所得税と住民税を足した13万4000円です。
これはAさんのケースですが、親の年齢(70歳未満か否か)、扶養する人の年収と税率、そして親と同居か別居かによって金額は変わります。いずれにせよ、節税効果は期待できるといえるでしょう。
【監修】
井上 大輔(いのうえ・だいすけ)公認会計士・税理士
公認会計士・税理士として、会計コンサルティング・税務など多数の業務に従事しています。お客様の立場にたって、税金をわかりやすいものへ、会計の力で経営を飛躍させるため、様々なお客様のパートナーであり続けます!
事務所名 : 港公認会計士・税理士事務所
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(弁護士ドットコムニュース)