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勝地涼、腹黒い演技で視聴者の心掴む 『ヒモメン』池目役で見せる企み顔

2018年08月09日 06:02  リアルサウンド

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 土曜ナイトドラマ『ヒモメン』(テレビ朝日系)は、”楽して生きたい”をモットーに、働かないことに全力を尽くすヒモ男を主人公にしたコメディドラマだ。若手演技派俳優・窪田正孝が、働かないことに全力を尽くす青年・碑文谷翔(ひもんやしょう)を演じている。恋人・春日ゆり子(川口春奈)への愛情は誰にも負けない自信があり、彼女のピンチには全力で立ち向かうが意地でも働かない。巷では”翔ちゃん”のあまりのヒモっぷりに「窪田くんでもさすがに無理」という声もあがっているようだが、ヒモを更生させたいゆり子との攻防は非常に面白い。


参考:モールで作った結婚指輪で川口春奈にプロポーズ!? 『ヒモメン』窪田正孝の“翔ちゃん節”が炸裂


 そんな中、低堕落な翔ちゃんとは対照的な登場人物がいる。それが勝地涼演じる池目亮介だ。ゆり子と同じ病院に勤務している優秀な医師であり、看護師たちの間でも人気が高い。池目はゆり子に恋心を抱いているのだが、実は執念深い一面があり、視聴者だけがそんな彼の腹黒い部分を垣間見ることができるのだ。想いを寄せるゆり子がヒモ男と交際していると知り、「なぜ俺になびかない」と焦りを見せた彼の邪悪な表情は、翔ちゃんとはまた違ったキャラクターの魅力を感じさせる。


 勝地は、テレビドラマ、映画、CM、舞台など幅広い方面で活躍。プロミスのCMで柄本時生と架空のミュージシャンを演じてる姿が印象に残っている方も多いだろう。映画『亡国のイージス』では、第29回日本アカデミー賞新人賞を受賞している。また勝地の存在感が飛躍したのは、2013年に放送された連続テレビ小説『あまちゃん』(NHK総合)ではないだろうか。”前髪クネ男”と命名されたキャラクターでたった1度しか出演しなかったにも関わらず、視聴者に強烈なインパクトを残している。


 そんな勝地が演じる池目。患者や看護師に分け隔てなく優しく接し、イケメンで高収入でと非の打ち所がない。しかし第1話終盤で見せた腹黒い一面が彼の本性だ。第2話はそんな腹黒い一面を存分に堪能できる回だった。積極的にゆり子にアピールし、翔ちゃんの心をかき乱す池目。ゆり子は、男性を仕事や年収で判断する姉の桜子(片瀬那奈)に翔ちゃんを会わせまいとしている。そんな彼女のために、“彼氏役”を買って出る池目。実際には、ヒモ男を毛嫌いする後輩看護師・浜野このみ(岡田結実)の存在を利用して、ゆり子と翔ちゃんを破局させようと計画しており、翔ちゃんの目の前でゆり子の肩を抱いたり、優秀さをひけらかしたりと得意げである。嫌味のない爽やかな笑顔で、順調な交際を演じてみせる池目に対し、気が気でない翔ちゃんの表情が面白い。周りから見ると非の打ち所のないイケメンだが、視聴者には腹黒い一面が伝わっているので、爽やかな笑顔が企み顔に見えてしまうのも愉快だ。


 池目の本性が現れるとき、勝地の表情がアップで映され、その表情には紫色のライトが照らされる。いわゆる「悪いことを考えている演出」だが、勝地は決して極端な表情の演技はしない。もちろん口元を歪めたり、目を細めたりといった悪い顔にはなるが、普段の池目と大差はない。だからこそ、彼が普段から自分の体裁のために立ち回っていることが伝わってくる。視聴者が垣間見ている本性は、きっと彼のほんの一部分に過ぎない。恐らく彼は、爽やかな笑顔を振りまいているときも、腹黒い台詞が胸の内で語られていることだろう。第1話で本性を曝け出して以降、どこか本性が滲み出て見えてしまうようになった池目。穏やかな表情を浮かべながら、視聴者にだけ本性を見せ続ける勝地の演技は見事だ。


 また、そんな池目が嫌われ役にならずに済むのは、池目の想いや行動が空回りすることにある。どんなにヒモとは対極なイケメンぶりを見せつけても、ゆり子の心は頑なに翔ちゃんから動かない。“天性の人たらし”である翔ちゃんに叶わない池目の悔しそうな表情が、視聴者の心を掴む。のびのびとヒモを演じる窪田とは対照的な演技を見せる勝地。毎回驚かされる翔ちゃんのヒモっぷりがこのドラマ一番の見どころだが、ゆり子を奪い合う翔ちゃんと池目の対決からも目が離せない。(片山香帆)