政府は東京オリンピックをきっかけに「サマータイム」の検討を始めた。当初は2019年から2020年の2年間、6月から8月の数か月のみ2時間繰り上げる案が有力だったが、これを契機に「恒久的に夏時間を運用する方針」であることも明らかになっていることを、スポーツ報知が伝えた。しかし「長時間労働につながる」など、生活時間が変わることへの懸念は広がっている。
8月7日放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でもこの話題を伝えたが、識者のひとりが「海外でもやっています」等と楽観的な発言をすると、ネットでは「海外では日本みたいに馬鹿みたいに残業してない」などの批判が上がった。(文:okei)
「結果的に見ると世界の先進国のほとんどがやってるんですよ」
「サマータイム」は、国(地域)の時刻そのものを変更する。単に会社の出社が早くなるだけではない。たとえば午後5時が定時だったなら午後3時か4時のまだまだ明るいうちに就業時間が終わることになる。
番組コメンテーターで学習院大学の伊藤元重教授は、「前からやるべきだと思っていたんです」と、サマータイム導入に賛成であることを明かし次のように述べた。
「いろいろ理由はあるんですが、とにかく夏は朝早くから日が昇っているわけですから、 簡単にいえば『夏は早寝早起きしましょう』と。(中略)いろんな国がやったり止めたりしていると思いますが、結果的に見ると世界の先進国のほとんどがやってるんですよ」
サマータイムを評価している国は多いが、日本は実行するためのステップができていなかったとしている。過去には日本も1948年から1951年にかけて実施しているが、3年で廃止になった。
大江麻里子アナが「長時間労働になってしまうだけという懸念がありますよね」と質問すると、伊藤教授は
「でも海外ではそうなってないですよね」
と、さらりと回答。大江さんは小さな声で「うーん?」と唸り、一瞬疑問の表情を浮かべていた。
これに視聴者からは「そもそも海外では日本みたいに馬鹿みたいに残業してない」といった批判や、呆れる声が出ている。同じ国で時差がある海外と日本を同じに考えるのは違和感があるし、そもそも海外には「サービス残業」なんて言葉はないだろう。
菅官房長官は慎重な姿勢「日常生活に影響が生じる」
伊藤教授はさらに、「この際、働き方改革とセットでやれるという意味ではいいチャンス」とも説き、サマータイムで早く仕事から解放され、時間を有効活用できるメリットを話した。この酷暑が「もう一押しの要因になる」との考えだ。
たしかに、働き方改革で残業を減らすために早朝出勤が推奨され、実際に上手く残業を減らした企業もある。一方で、サービス残業が増えただけという所も多い。「2年間、数か月だけ2時間繰り上げ」という期間限定は、体内時計が狂って体によくないとする見方も少なくない。
日本睡眠学会はサマータイムで生じる健康への悪影響に警鐘を鳴らしており、サイト掲載の資料にこんな事例を載せている。
「ロシアでは、切り替えの時期に救急車の出動や心筋梗塞による死亡者が増加し、生体リズムに反している、省エネ効果がほとんどなかったとの理由から、2011年3月末の夏時間への移行を最後に時間の移行を廃止しています」
海外といっても、状況は様々だ。菅官房長官は7日の会見で、「日常生活に影響が生じるものであるし、大会までの期間はあと2年と限られている」と述べ、慎重な姿勢を示している。