F1ハンガリーGP後の8月3日に発表されたレッドブル、ダニエル・リカルドの2019年からのルノーF1への電撃移籍。その一報にはF1関係者だけでなく、レッドブルのチーム内でも驚かされたようだが、ホンダのモータースポーツ部、山本雅史部長もまた、大きな驚き受けたひとりだった。スーパーGT第5戦が行われた富士スピードウェイを訪れた山本部長に聞いた。
「びっくりしました。クリスチャン(ホーナー代表)も(ヘルムート)マルコさん(レッドブル・モータースポーツアドバイザー)も、みんな驚いています」とチームだけでなくホンダの山本部長にとっても、リカルドの移籍はまさに晴天の霹靂だった。
一報が入った時の感想を、「(8月3日)夜遅くに携帯にメッセージが入りました。リカルドが移籍と書いてあって、なんだそれは!? と(苦笑)」と振り返った山本部長。7月22日に決勝が行われたドイツGPでも、レッドブルのチーム関係者と2019年に向けての話をしていた矢先のことだったという。
「この前のドイツGPのホッケンハイムの現場で2019年のレッドブルのドライバー体制についても話をしていましたが、僕が事前にチームから聞いていた話と全然、違いました(苦笑)」
「マルコさんからはリカルドも残留の方向と聞いていて、いつ正式契約かという話になると思っていました。マックス(フェルスタッペン)とレッドブルは2020年までの契約延長を発表しましたし、リカルドもたぶん大丈夫なのでと、トロロッソの話などをしていたのですが……とにかく、びっくりです」
なんども、「びっくり」という言葉で今回の電撃移籍の驚きを表現する山本部長。「クリスチャンがメディアにコメントを残しましたのが、僕もそのままの感想で、彼が冗談だと思ったくらいの驚きです。ですので、みんな、知らなかったみたいですね」
ただ、これで2019年のレッドブルF1のシートはひとつ、空きができることになった。レッドブルは今年3勝を挙げているように、現在のF1で勝つことのできる3つのトップチームのひとつであり、今後、多くのドライバーがそのシートを狙うことになる。2019年のレッドブルのシートについて、来年からエンジン/パワーユニットサプライヤーとなるホンダの意向はどの程度、反映させることができるのだろうか。
「ホンダが関われるというか、マルコさんたちが『山本がいいと思うドライバーがいたら推薦してくれ』と言われているに過ぎませんので、僕たちに決定の権利があるわけではありません。相談には乗ってくれるというレベルです」と、ホンダに決定権があるわけではないことを強調。ドライバー選定はやはり、レッドブルのチーム主導で進められるようだ。
今後、リカルド移籍の真相とともに注目される、レッドブルのシート争い。突如ストーブリーグの中心となったレッドブルのシート争いは、日本のファンにとっては2019年のレッドブル・ホンダの活躍を担うことになるだけに、その進捗から目を離すことはできない。
そして、今回の一件でホンダ山本部長は改めてモータースポーツのトップであり、まさに生き馬の目を抜くF1界の恐ろしさを感じたという。
「ちょっと、僕もびっくり。ドイツGPの時にリカルドと、『来年、一緒に頑張ろうね』と話した矢先でしたからね。そして笑顔で握手していたのに……F1って分からないですし、ある意味、これがF1なんだと思います。それを今回の件でも実感しました」