トロロッソ・ホンダの活躍を甘口&辛口のふたつの視点からそれぞれ評価する連載コラム。レースごとに、週末のトロロッソ・ホンダのコース内外の活躍を批評します。今回はハンガリーGPを、甘口の視点でジャッジ。
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F1第11戦ハンガリーGPで、ピエール・ガスリーが手にした6位という成績は、第2戦バーレーンGPの4位にも負けないくらいの価値がある結果だった。それは、予選で初めてブレンドン・ハートレーとともに2台そろってQ3に進出するパフォーマンスを披露したからだ。
ハンガリーGPの土曜日。予選前に行われたストラテジーミーティングで、「予選がウエットになる可能性がある」と報告されると、ドライバーは「雨が降った方がいい」と語っていたという。それは、滑りやすい路面状態になれば、ホンダPU(パワーユニット/エンジン)のドライバビリティの良さがアドバンテージになると感じていたからではないだろうか。
ガスリー担当のパフォーマンスエンジニアを務める湊谷圭祐は、ドライバビリティについて、次のように語る。
「ドライバビリティとは、アクセルを開けたときのトルクの追従性を表した言葉で、低速コーナーの立ち上がりでとても重要になります。さらにウエットコンディションになると、路面の状況がわかりづらいため、ドライバーがアクセルをパーシャル(全開でも全閉でもない状態で一定に保つ)にする時間は必然的に長くなる」
「そうなると、よりドライバビリティが大切になります。ドライコンディションではコーナーを立ち上がってアクセルを踏み始めてから全開になるまでの時間が0.5秒だったとしたら、ウエットでは路面のグリップ力も低いので、2秒とか3秒かかるからです」
ドライバビリティの改善は、シーズンオフの間にHRD Sakura(栃木県にある本田技術研究所)側で行われた開発で、かなり改善されていたと湊谷エンジニアは語る。
「低い回転数と、低い燃料流量のエリアでのマッピングの精度が上がりました。だから、現場ではほとんど何もしていません」
■ハンガリーGP予選でトロロッソ・ホンダがQ3に進出できたもうひとつの理由
もう一つ、ウエットコンディションとなったハンガリーGPの予選で、トロロッソ・ホンダの2台がQ3へ進出できた理由がある。それはエネルギーマネージメントの対応力だ。
現在のレギュレーションでは1周で使えるエネルギーは4MJと決まっているため、ドライコンディションで予選が行われる場合は、それを1周で使い切るように設定されている。もしも、1セットのタイヤで2回アタックしたければ、1周のチャージラップを間にはさんで、エネルギーを蓄えた後に、再度アタックを行う。
ところが、雨が降ると路面の状況が刻々と変わるため、ドライバーは2周連続でアタックしたい。さらに、ウエットコンディションになると全開時間が短くなるため、4MJを1周で使い切れなくなる。ハンガロリンクは1周が短いため、エネルギーマネージメントをうまく調整すれば、2周連続が可能だった。
湊谷エンジニアは、ハンガリーGPの予選に向けて、エネルギーマネージメントの準備も、うまくいったと語る。
「今回のハンガリーGPの予選のQ2とQ3がそうでした。ドライバーとチームと相談しながら、エネマネ(エネルギーマネージメント)モードをいろいろ調整してもらいながらアタックしてもらいました」
HRD Sakuraと現場、そしてホンダとトロロッソ、そしてドライバーが、一体となってつかんだ2台そろってのQ3進出だった。
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