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フォーリミ、フレデリック、sumika、ユニゾン…バンドのアリーナワンマンに見る“チーム力の強さ”

2018年08月06日 08:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 偶然ではあるが、個人的に、今年の上半期はバンドのアリーナワンマンを観る機会が多かった。そこで演出面に焦点を当ててそれぞれのライブを振り返ってみたところ、共通点として「チーム力の強さ」という点が浮かび上がった。


(関連:04 Limited Sazabysの本当の快進撃はここから始まるーー真摯な思いを伝えた横浜アリーナ公演レポ


 その最たる例が4月29日に行われた04 Limited Sazabysの横浜アリーナ公演だ。このライブは、結成10周年を記念した東名阪アリーナツアーのうちの一公演という位置づけ。2階建てになっているステージセットの頭頂部にメンバーが登場するオープニングシーンはインパクト抜群だったし、その後も、火炎砲、CO2、スカイダンサー(風になびくと踊っているように見える巨大な人型のバルーン)、アメコミ風のVTRなどを取り入れていた。フォーリミのメンバーは(スタッフも含めた)自分たちのことをしばしば「チームフォーリミ」というふうに言っているが、このライブでも、GEN(Ba/Vo)がMCで「10年間で出会ったいろいろなスペシャリストとともに作っている」と発言。また、このツアーでは彼らの「同志」にあたる存在のバンドマンがゲスト出演するコーナーもあり(横アリ公演ではBLUE ENCOUNTの田邊駿一、go!go!vanillasの牧達弥が登場)、バンドマン同士の団結感が強調された。そんな彼らは、以前インタビューにて、「(前略)僕たちや『YON FES』(筆者註:04 Limited Sazabysが地元の愛知県で主催しているフェス)っていうものが、みんなのものっていう意識で続いてくれてたらいいなと思いますね」という発言をしている(引用元:『ROCKIN’ON JAPAN』2017年6月号)。その辺りの意識がフォーリミの在り方に直接影響を及ぼしているのかもしれない。


 翌日の4月30日には神戸ワールド記念ホールに移動し、フレデリック初のアリーナワンマンライブを観た。2日連続でアリーナライブを観たから気づけたのだが、フレデリックもフォーリミも、キメやビートに合わせて照明を切り替えるような演出が多かった。彼ら同様、視覚効果を加えることにより、バンドの刻むリズムをさらに強調させる演出はここ数年で急激に増えた印象がある。その背景には、点灯してから最大光量に達するまでの時間がごく短いLED照明の普及、’10年代のフェスシーンで頭角を現し始めた“速いテンポのダンスビートでオーディエンスを踊らせる”タイプのバンド(もちろん彼らの魅力はそこだけではないが)が現在アリーナを埋めるほどの人気を獲得しているのだということなど、様々な要素が絡まっていて、まだまだ考察の余地がありそうだ。さて、フレデリックのこのライブは、ミニアルバム『TOGENKYO』を携えたツアーシリーズのファイナルにあたるもの。同シリーズのライブハウス編でも見られたヒップランドミュージックのクリエイティブ・ディビジョン=INTとのコラボがこの日も行われたほか、『TOGENKYO』ジャケットにデザインされたモチーフが神戸の街並みにオーバーラップしていくオープニング映像、「たりないeye」MVに登場する部屋を想起させるセットのサブステージなど、ビジュアル面において、MVやアートワークとリンクする演出もあった。おそらく、音源リリース・ツアー・MVなどを一連の流れとして捉え、各担当者同士が密にコミュニケーションをとりながら制作を進めていたのだろう。総合芸術といえるそれらのアウトプットは、部門間連携がきちんとできていなければ成り立たないものだ。


 6月30日に行われたsumikaの日本武道館公演は、「Starting Caravan」というツアータイトルにちなんだテント型の舞台セットをはじめ、彼らの鳴らす明るい響きのポップソングによく似合う華やかな演出が随所に施されていた。しかし武道館だから特別そうだったわけではない。例えば、2017年2月のZepp DiverCityワンマンでは、その規模の会場にしては珍しく大型のスクリーンを導入。ライブハウスの頃から彼らはアリーナ規模の演出を行っていたのだった。sumikaは今年4月、「結成5周年のご挨拶」という動画をYouTubeで公開した。この中で自分たちの成り立ちや携わるスタッフのことを丁寧に説明する姿からも読み取れるように、彼らは元々DIY精神を大切にしていた人たちで、その積み重ねが花開いたのが武道館公演だった、というような印象。アンコールで「「伝言歌」」を演奏する前、自分たち4人だけではなく舞台裏まで含めてsumikaなのだと言いながら、片岡健太(Vo/Gt)がスタッフにまで呼びかけ、コール&レスポンスをしたシーンはまさに「チームとしてのsumika」を象徴するようなものだった。


 時系列を遡ってしまうが、1月28日に行われたUNISON SQUARE GARDENの幕張メッセ公演ではアリーナ特有の演出などはなく、あくまでツアーの他公演と同等の扱いだった。それはなぜかというと、元々このバンド(特に田淵智也/Ba)は大会場でライブをすることに対して意欲的ではなく、バンドの人気上昇に伴いチケット申し込み数が増えたため、アリーナワンマンに踏み切った、という背景があったからだ(この辺りについて詳しく知りたい人は、オフィシャルHPに掲載されている田淵のブログを遡ってみてほしい)。唯一違っていたのは、ステージ上方にLEDスクリーンが設置されていたこと。開演直前にLEDが点灯しただけで観客がどよめきに近い声を上げていたのはかなり新鮮だった。バンドの演奏ももちろん素晴らしかったが、たとえステージが遠くてもライブハウスのような臨場感が損なわれなかったのは、メンバーの姿を絶えず捉え続けたこのスクリーンの存在、また、いつもとは異なる会場で“いつも通り”の温度感を実現させた音響・照明技術によるところも大きい。実際、同公演終了後のインタビューでは、田淵も「(前略)PAチーム、照明チーム、映像チームが、君たちの哲学は変えないでいいから、その前提で考えるねってやってくれたことは、非常にバンド冥利に尽きました」と話していた(引用元:『ROCKIN’ON JAPAN』2018年4月号)。ユニゾンの場合、先に触れた3組のように華やかな演出を取り入れたわけではないが、ライブのやり方に強いこだわりを持っているバンドだからこそ、チームの理解が必要不可欠だったのではと思う。そんな彼らのスタンスは、6月13日に行われた横浜アリーナ公演でも同様に貫かれていた。


 アリーナでワンマンライブをするまでに至ったのはもちろんバンド自身の実力あってこそ。しかし、メンバー以外の人間の力の大きさを理解し、「チーム」として動くことの大切さを分かっているバンドだからこそ、ここまで成長することができたのかもしれない。(蜂須賀ちなみ)