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GT300決勝《あと読み》/長距離耐久レースのなかで、チーム力の強さが出た多彩な作戦バラエティ

2018年08月06日 07:31  AUTOSPORT web

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GT300はチームによってピット戦略がわかれた
初開催となる500マイルレース=約800kmのレース。8月5日に行われたスーパーGT第5戦富士の決勝レースでは、このレース距離によってGT300クラスでは、車両特性やその狙いによって、さまざまな戦略が採られることになった。

 昨年まで開催されていた鈴鹿1000km同様、今回の富士500マイルでは、ピットインの義務回数が定められていた。義務づけを定めたブルテンNo.036-Sの内容は下記のとおりだ。

「決勝レーススタート後(フォーメーションラップを終了し、走路上のスタートラインを通過した後)、ドライバー交代を伴う最低4回のピットインが義務付けられる」というもの。つまり、全車が4ストップ5スティントが義務づけられたのだ。

 ただ、実は800kmというレース距離は、3ストップで走りきれるのだという。つまり、1ストップ余計だ。これをどう消化していくのかで、各陣営の戦略が分かれることになった。スーパーフォーミュラ等でも、昨年あたりまでタイヤ交換義務づけがあるレースでは、1周目でピットに向かい、義務をこなしてクリアな部分を飛ばす戦略があったが、これを採用したチームがあったのだ。

 当然ながら予選順位も関係するのだが、1周目を終えてピットに向かったのは17番手スタートのK-tunes RC F GT3や23番手のSYNTIUM LMcorsa RC F GT3、26番手のGULF NAC PORSCHE 911、四輪脱輪により予選ベストタイム抹消となってしまった28番手スタートのマネパ ランボルギーニ GT3といったところ。

 さらに、GT500車両がGT300をラップダウンし始めると、トラフィックが起きラップタイムが大幅に落ちる。これを嫌って、6番手を走っていたD'station Porscheが5周を終えピットへ。8番手だったLEON CVSTOS AMGも7周を終えピットインした。これで、このレースの構図は実際に首位を走っていたグループと、“ピットイン義務をこなした組”というふたつのグループに分かれていった。

■均等割り組でも分かれた作戦バラエティ

“ピットイン義務をこなした組”にとっては、レース途中でセーフティカーが出た場合、戦略に柔軟性が出るし、ピットやトラフィック等のロスタイムが減らせる。ただ、途中ロングスティントをこなさなければならない。一方、正攻法で“均等割り”をしたグループは、タイヤのライフに余裕が出て高いペースを保てる。“均等割り”を採用した組は、その車両の特性や一発の速さで前のグリッドを獲りたい等のさまざまな理由があったが、結果的にはこちらが上位に来ることになった。

 そのなかでも戦略が分かれることになるが、最終的に富士を得意とするマシン特性、そしてブリヂストンタイヤのパフォーマンスで圧勝を収めたのがARTA BMW M6 GT3だった。一方、2位のグッドスマイル 初音ミク AMGは、4回のストップを均等割り。全ストップでタイヤ交換を行ったが、高いペースでポジションを上げてきた。

 一方、3位の31号車TOYOTA PRIUS apr GTは平手晃平の速さを活かしつつ、無交換と四本交換を交互に行う作戦を採った。実は1スティントめを短くするような変則的な考えもあったようだが、「だいたいそういう作戦をやると失敗するからとみんなに反対された(笑)。普通にやったらうまくいった」と金曽裕人監督は笑う。

 また、5位のHOPPY 86 MCは、さらに変則。スティントの切り方はオーソドックスながら、最初は右側二輪、次に左側二輪、続いて無交換、最後は四本というタイヤ交換作戦を採っている。土屋武士監督によれば「理由は言えないけど、分かる人は分かる」という作戦だったという。

 ただ途中、近藤翼のドライブ中にタイヤがわずかに消耗してしまい、その影響もわずかにあり坪井翔がスピンしてしまうシーンも。「でもウチは若手を育てるチームだし、速いけど経験を積めたから。マザーシャシーはめちゃくちゃ暑いのでふたりはキツかったし、足りないものはまだまだいっぱいあるけど、悔いのないチョイスができた」と現状のパッケージでの満足できるレースだったようだ。

■力があるチームが上位に
 最終的にはARTA BMW M6 GT3が優勝、表彰台は“均等割り”組が占めたが、“ピットイン義務をこなした組”にとって少々痛かったのは、セーフティカーが出るような大きなクラッシュが出なかったこと。これで途中のペースに差が出てしまった部分があるだろう。ただ、そんな中でも3位にTOYOTA PRIUS apr GT、4位にLEON CVSTOS AMGが食い込んだのは、ブリヂストンが今回強力なパフォーマンスを発揮したことが大いに関連しているだろう。

 一方で、最後尾近くから作戦を奏功させたマネパ ランボルギーニ GT3の活躍も特筆すべきものだし、残念ながら終盤にタイヤトラブルに見舞われてしまったHitotsuyama Audi R8 LMSも、「ペースとしてはまだまだ(富田竜一郎)」と言いながらも、これまでの不運から抜け出つつあることを感じさせた。

 今回のレースを振り返ってみると、多彩な特徴をもつGT300ならではのさまざまなスタイルの“500マイルの戦い方”があったように思える。そして、上位に食い込んだのは、昨今のGT300をリードする強豪ばかりだ。ある意味GT300の“強さ”をもつチーム力を証明するレースとなったのかもしれない。