電動ツーリングカーの新シリーズ、E-TCRに向けスペインのセアトが開発中のフルEVマシン『セアト・クプラe-Racer』が、7月初旬にクロアチアで行ったバッテリーパック搭載の動作確認テストに続き、ジョルディ・ジェネのドライブで初のシェイクダウンテストを行なった。
これまですべての電子機器、電装品、バッテリーパック、冷却システム、駆動系は個別にテストが続けられてきており、セアトの高性能車部門として新名称を採用した"クプラ"の開発部隊は、この7月初旬にクロアチア・ザグレブ近郊にあるトラックですべての要素を統合し、車載した状態での初テストを実施した。
現在TCRシリーズに参戦する『セアト・クプラTCR』のシャシーをベースに、フルEV車両として改良が施されたこのエレクトリック・ツーリングカーの心臓部には、6072個の丸型セルで構成されたバッテリーパックが搭載されており、その容量は一般的な携帯電話のバッテリー約9000個分に相当する。
そのテストでコンパイルされたデータを元に、レーストラック用の出力マネジメント・プログラムを実装した『セアト・クプラe-Racer』は、7月最終週にスペイン・バルセロナ近郊にある全長4.144mのパルクモーター・カステーリョに運び込まれ、WTCC世界ツーリングカー選手権の優勝経験者で、セアトの開発ドライバーを務めるジョルディ・ジェネにステアリングが託された。
クプラのテクニカルチームが見守るなか、シェイクダウンテストを開始したマシンは、電気モーターの最大出力をモニタリングしながら一連の動的テストとマネジメントプログラムの検証作業を行い、無事に予定していたすべてのテストプログラムを完了した。
加速力と低重心化によるフィーリングを絶賛も、ブレーキングには課題アリ
車両担当のエンジニアと電気工学技術者で構成された開発チームは、今回のシェイクダウンテストのデータを元に、次回9月に予定されているテストでラップタイムにフォーカスした走行を計画。初のE-TCRチャンピオンシップでの勝利を狙って今後も作業が続けられる。
クプラ・レーシングのディレクターを務めるハイメ・プーチは、『セアト・クプラe-Racer』のシェイクダウンテストを終え「我々はこれがモーターレーシングの未来であることを証明し、このE-TCRマシンが現在のガソリン仕様ツーリングカーと同等か、それ以上の競争力を持つことを示せると思う」と自信を見せた。
「我々のこうしたトラックテストの模様が、その他のマニュファクチャラーを刺激し勇気づけ、E-TCR選手権への参戦を奨励することになればと願っている」
また、ドライバーを担当したジェネも初EVマシンの感触を「うれしい驚きだった」と評した。
「とても印象的な加速を見せてくれて、さらにバッテリーセルが床下に敷き詰められていることにより、素晴らしい低重心化が図られていると感じられた。予想よりもはるかに優れたドライブフィールだったよ」と、初テストの結果に満足げなジェネ。
「我々が唯一にして最大の改善点だと考えているのはブレーキングだ。これはご想像の通り、バッテリーによる重量増加が大きく影響しており、これまでのマシンに比べて高い精度で止めるのがより難しくなっているんだ。それが次回のテストでどう改善されるかも楽しみだね」