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吉沢亮、オールマイティな活動の奥に滲む“貪欲な意志” 連ドラ、映画、CMと大活躍の状況を読む

2018年08月03日 10:51  リアルサウンド

リアルサウンド

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 しばしば役者として引っ張りだこという表現を見聞きするが、それが大げさに感じる場合もある。しかしこのところの吉沢亮を前に、大げさと言える人はいないだろう。現在、「銀座カラー」「ANA」「アイプリモ」などのCM出演に、放送中のドラマが2本、今年公開の出演映画は待機作を含めて7本! まさに八面六臂、それこそクローンやアバターがいるに違いないと思わされる活躍を見せている。


 1994年生まれで今年24歳の吉沢は、2009年、所属事務所アミューズのオーディションをきっかけに芸能活動をスタートし、その後11年に役者デビュー。同年、抜擢された『仮面ライダーフォーゼ』の仮面ライダーメテオ、朔田流星役で一気に注目を集める。仮面ライダーフォーゼ、如月弦太朗で同作の主演を務めた福士蒼汰とともに高い人気を得て、翌年、「TOEI HERO NEXT」第2弾となる映画『ぼくが処刑される未来』で福士とともにW主演を果たした。


 以降、主演を務めたドラマ『ぶっせん』(TBS系)、『水球ヤンキース』(フジテレビ系)、主演映画『サマーソング』などにはじまり、快進撃を続けていく。当初からいまと変わらぬ美形で目を引く吉沢だが、一方で役者は時にどこかしら特長があったほうが印象に残りやすい。あまりにキレイでクールに映る顔は、逆にファンではない層には覚えてもらいづらいという事実もあるのだ。


 実際、数年前までの吉沢は、出演数に対して、その認知度が見合っていなかったといえるが、とどまることなく、着実に作品を積み上げ、多岐にわたるキャラクターを演じていった。『カノジョは嘘を愛しすぎてる』『アオハライド』『オオカミ少女と黒王子』『リバーズ・エッジ』『ママレード・ボーイ』など、少女コミックの映画化にも多く出演。引っ込み事案な高校生、いじめられっ子のゲイの青年、両親との関係に悩む青年など、いわゆる王子様的な役柄ではないのがおもしろい。


 テレビドラマから映画へと繋がっていった『トモダチゲーム』など、少年コミックものにも挑んできた。何より、彼の転機になったといえるのが『銀魂』への抜擢である。空知英秋原作の大ヒットコミックを、福田雄一監督が小栗旬主演で実写化した同作において、吉沢は真選組一番隊隊長の沖田総悟を演じた。漫画から抜け出たようなビジュアルで、公開前から話題の的となり、公開がスタートしてからも、カブトムシの着ぐるみを飄々と着こなしたり、たまに毒を吐く姿に、原作ファンからも支持を集めた。dTVで配信された『銀魂 -ミツバ篇-』も好評を博す。


 その後、さらに福田監督の『斉木楠雄のΨ難』で振り切った演技を見せた吉沢。『銀魂2 掟は破るためにこそある』にも沖田役で続投し、真選組の危機を描くストーリーでキーパーソンとして立つ。『銀魂』での大ヒットは、吉沢の一般への認知度をぐぐっと引き上げた。ここで広く受け入れられたことは、彼自身にも影響を与えているに違いない。もともとクールな雰囲気を持っていた吉沢だが、『銀魂』のヒットを経て、その落ち着きに実感が伴ってきた。美形に注目が集まることにも、役者としての評価が高くなったことで、自分の武器として素直に受け入れ、より生かしていくことができるはずだ。


 現在公開中の映画『猫は抱くもの』では、沢尻エリカと共演し、自分は人間で、沢尻扮するヒロインの恋人だと信じているロシアンブルーの“猫”の良男を演じた。演劇の舞台を意識した一風変わった犬童一心監督の世界観のなかで、特殊なメイクなどを一切せずに、“猫”、なかでもロシアンブルーだと伝わる良男に説得力を持たせている。


 こちらも公開中の、久保帯人の大ヒットコミックを佐藤信介監督が実写化した『BLEACH』では、黒崎一護役の福士蒼汰と再共演。『仮面ライダーフォーゼ』ファンを喜ばせているだけでなく、複雑な思いを抱えつつ、一護と共闘する石田雨竜を好演。もっと吉沢のアクションを観たかったと思えるのは、それだけ魅力的に映った証拠だ。


 テレビドラマも2本が放送中。プライムタイムドラマ『サバイバル・ウェディング』(日本テレビ系)では、波瑠演じるヒロインが恋する広告代理店勤務のイケメン柏木祐一役を務めている。意外なことにこれまでほぼなかった、爽やかなイケメンを直球で演じている貴重な作品だ。


 主演を務める深夜ドラマ『GIVER 復讐の贈与者』(テレビ東京系)では、打って変わって、生まれつき、人間らしい感情を持ち合わせていない復讐代行業者の義波を演じている。人間の心が欠落した復讐代行業者ということで、クールな役柄と思いきや、依頼人の言葉を代弁したり、復讐実行のために女装するなど、さまざまな顔を見せる。第1話から、ゲスト出演の吉村界人との激しいぶつかり合いで、唾を飛ばしまくりながら(依頼者の)感情を噴出させるなど、熱演しており、凝った演出や映像と相まって、吉沢の演技力を堪能できる。


 さらに今後は前述の『銀魂2 掟は破るためにこそある』のほか、少女コミックの映画化『あのコのトリコ。』が公開。また来年4月スタートのNHKの連続テレビ小説『なつぞら』で広瀬すず演じるヒロインなつの友人で画家志望の山田天陽に扮することが発表されている。いよいよ朝ドラに進出を果たす吉沢。現在のブレイクを上回る、大きなステップアップに繋がるに違いない。


 実はインタビューで、自分をネガティブだと語っている吉沢。芝居が上手くいかないと、すでに撮り終わったシーンでも練習を続けてしまうことがあるという。もともとは役者に興味を持っていなかったという吉沢だが、多くの作品を経ての、その姿勢は、ネガティブというより、芝居に対する“貪欲さ”の現れだと感じる。美しい顔の奥に秘めた貪欲さに、ますます才能が開花していくはずだ。(文=望月ふみ)