自民党の議員がLGBTへの無理解を示し、また批判が相次いでいる。谷川とむ衆院議員(42)は7月29日、「千原ジュニアのキング・オブ・ディベート」(Abema TV)に出演し、"同性愛は趣味""同性婚を認める法律を作る必要はない"と発言したのだ。
こうした発言を当事者はどう受け止めているのか。男性パートナーと"結婚"し、夫夫(ふうふ)生活を送る七崎良輔さん(30)は、「もし無知による発言なのであれば、即刻議員辞職された方がいいと思います。『趣味ではない』とわかっていて、あえてこの言葉を使ったのであれば悪意に満ちているため、こんな人間が議員である事を恥に思います」と厳しく批判する。
谷川氏「男と女が結婚して、子を授かって、国を衰退させないようにしてきた」
番組では、ゲスト出演した乙武洋匡さん(42)が、"なぜ同性婚や夫婦別姓を認めないのか"と問題提起した。
「結婚する人はこれから全員夫婦別姓にしなさいと言っているわけではありません。あくまでも選択的夫婦別姓です。今まで結婚というものは、異性愛者にしかメニューとして用意されていなかった。それを同性愛者の方にも用意する。また結婚する時に名字も同じでなければいけないというメニューだけから、別々の名字のままでもいいよというメニューも用意するということに、なぜ踏み切れないのかが全く理解できません。どちらかに統一しろという話なら賛否両論が出ると思いますが、今選択肢がなくて困っている人に選択肢を用意することはごく自然なことだと思う」
これに対して、出演していた文筆家の鈴木涼美さん(35)や元SEALDsの諏訪原健さん(25)らは「そう思う」と賛意を表明。唯一、谷川氏だけが「そう思わない」と反対した。
「同性婚とか夫婦別姓、多様性を認めないというわけではないんですけど、それを法律化する必要ないと僕は思っているんですね。『趣味』みたいなもので。(中略)わざわざ同性婚を認めますという法律は作る必要はないと思ってます」
多様性を否定するわけではないが、法律で認める必要はないという主張だ。なぜそう考えるのか、次のように語った。
「『伝統的な家族のあり方』っていうのであれば、僕の定義ですけど、男の人と女の人が結婚して、そこで子を授かって、家族っていう形態ができて、それを本当に大昔からずっと皆さん同じようなことをして、国を衰退させないように、国が滅びないようにしてきたわけですよね」
どうやら子どもを作れない、すなわち国の維持に寄与できない以上、同性愛者の結婚を認める必要がないと考えているようだ。"同性愛者は子どもを作らず、生産性がないから税金を使う必要がない"と主張した自民党・杉田水脈議員の差別発言にも通じるものがある。
「共同名義の住宅ローンを組めない」 結婚できないと様々な不利益が
こうした自民党議員の心無い言葉を当事者はどう受け止めているのか。東京都江戸川区で「LGBTコミュニティ」を主催し、自身も同性のパートナーと暮らす七崎良輔さんは、「『同性愛』は『趣味』と言う人が未だにいることを残念に思います」と話す。
「僕が思春期の頃、同性に心を惹かれ、自分は同性愛者ではないかと思った時期があります。でもそれを認めるのがとても怖かった。イジメを受けても、僕が変だからしょうがないと周りの大人や先生は言いましたし、自分でもそう思っていました。僕は自分が嫌いで仕方なかったのです。それを『趣味』と言えるでしょうか。自分で選択した訳ではないのです」
そしてやはり法律で同性婚を認めることが必要だという。
「異性同士は結婚し社会保障などで守られますが、私のような同性カップルは弊害が沢山あります。そこをまずは平等にすることが大切だと思っています。例えば、僕たちはマンションを購入する時に共同名義のローンを組めませんし、名義人が亡くなった時にもう一方が相続できるのかという不安を抱えています」
「異性愛者の権利はビタイチ侵害されないというのに」
谷川氏の発言が報道されると、ネットでも批判が噴出した。同性愛が趣味なら「異性との結婚も子育ても趣味みたいなもんだろ。なんで個人の趣味に税金使ってるの?」という声も多かった。異性愛でも同性愛でも恋愛や結婚は個人の"趣味"という意見だ。
しかし谷川氏からすれば、異性愛者なら子どもを産み、国家を繁栄させることができるということになるのだろう。こうした考え方については、「国民は国に奉仕せよという思想が滲み出てて、控えめに言ってクソですね」といった批判が上がっていた。
また乙武さんが指摘していたように、同性婚も夫婦別姓もそれを望む人が新たに権利を獲得できるというものだ。「異性愛者や同一姓希望者の権利はビタイチ侵害されないというのに、なぜにそんなに他者に権利を与えることを脅威に感じるのだろう」と疑問に思う人がいるのも頷ける。