東京医科大学で、一般入試の女子受験生の得点を恣意的に減点し、合格者数を抑制していたことが分かった。8月2日、読売新聞などが報じた。
東京医大では、英語、数学、理科の3科目で行われるマークシート式の1次試験に合格した受験生が、面接や小論文などが行われる2次試験に進むことができる。報道によると、点数操作は2010年頃から行われていて、1次試験の後、女子の得点を一律に減点していたという。
ネットでは「時代錯誤過ぎる」「信じられない」など、驚きと怒りの声が広がっているが、都内の医学部専門予備校の関係者は、「この手のことは昔からある。裏口入学の件で火が付いたのだと思うが、なんで今さら?という感じ」だと話す。
偏差値の低い私立医学部では「1点いくらで買わないか」と電話がかかってくることも
「少なくとも、10年以上前からやっていることは確かです。東京医大に限らず、3、40年以上前からこうした点数操作を行っていると、大学関係者から聞いたことがあります。」
得点操作が続いてきた背景には、現場の問題があるという。
「医師会の先生方は皆『男の医師が欲しい』と言います。女性の医師は、一番働いてほしい時期に出産や結婚で現場を去ってしまう。勤務医は今、24時間から36時間勤務という激務で、食事も粗末なものです。そういう状況で戦える人がいないと困る、という思いからです。偏見かもしれませんが、こういう状況では、女性より男性のほうが頑張ってくれるだろうという見方があります」
読売新聞の報道では、点数操作について東京医大関係者が「必要悪」と話すコメントも掲載された。ネットでは「最低最悪のコメント」「不必要な、純然たる悪」と批判が出ているが、取材に答えた予備校関係者は、「悪、という言い方もどうかと思う」と、大学側の事情に理解を示していた。
医学部受験生専門の家庭教師「ハイクラス家庭教師MEDUCATE」を運営する細井龍医師は、医学部入試の現状をこう語る。
「実際に『父親が東京医大卒だからコネで入った』という話を聞いたことがあります。また、東京医大に関わらず、偏差値の低い私立医学部では、2次試験後に『1点いくらで買わないか』と電話がかかってくることもあります。経営に協力してくれる家庭を優先するのは当然かとも思いますが、それが社会通念上公平かと言われると難しいところです」
医学部入試についてこれまで、女子だけ減点して調整するといった例は聞いたことがなかったそうだが、
「女性は生物学的に空間把握が苦手な傾向にあります。数学や物理の難易度を上げるなど、受験問題をうまく作れば、大学側が男女比をコントロールするのはある程度可能なのではないでしょうか」
と分析していた。
高校関係者には大きな衝撃「初めて聞いた」
医学部受験関係者の間では割と知られていたことのようだが、一方、都内の進学校で進路担当を務め、医学部を目指す女子学生を指導したこともある60代男性は、驚きを隠さない。
「これまで入試の情報は多々集まってきたが、こんなことは初めて聞いた。男子を優先したい、男性の医師を確保したいというのは年配者の発想だと思います。今の時代にそれをやってはいけない。進路指導する上で、女子だからこうした方がいい、などの特別な指導をしたこともありませんでした。かなりびっくりしています」
東京医大広報部は今回報じられた点数操作について、
「私達も報道を見て初めて知って、事実かどうかも把握できていない。内部調査はしているが、この件が調査対象になっているかどうかもわからない」
と回答している。