ベネッセ教育総合研究所は8月1日、日本・中国・インドネシア・フィンランドの4か国におけるワークライフバランスの調査結果を発表した。調査は、4~6歳の幼児を持つ母親計4944人(日本1086人、中国2778人、インドネシア900人、フィンランド180人)を対象に行なわれた。
就業状況を調べたところ、働いていない母親の割合は、日本では62.2%、インドネシアでは78.7%だった。一方、フィンランドと中国ではフルタイムで働く母親が多く、それぞれ75%、70.3%が常勤で働いている。
フィンランドでは母親も父親も16時台の帰宅が最多 日本の父親は22~24時に帰宅
ただしフィンランドでは、働いている母親の57.2%が16時台に帰宅している。報告書によると、勤務開始時刻・終業時刻が早いことが理由だという。早く帰宅できるからこそフルタイムの勤務と子育てを両立できるのだろう。一方、日本では18時台が34.9%、中国でも18時台が35.8%で最も多くなっている。
フィンランドでは父親の帰宅時間も早く、16時台が36.4%、17時台が24.8%となっている。中国では18時台が30.7%、インドネシアでは19時台が42.3%と両国においても19時頃までには帰宅しているという父親が多い。
しかし日本の父親は22~24時台が23%で最も多く、19時台も17.6%、20時台17%、21時台17.6%となっている。3か国と比べるとかなり遅い。
そのため、日本の父親の35.5%は、平日に1時間未満しか子どもと一緒に過ごしていない。1時間~2時間未満も23.6%で、半数以上が2時間未満しか子どもと接していないことになる。
一方、フィンランドでは、2~3時間、3~4時間、4~5時間のいずれも23.3%で、帰宅時間が早いからこそ日本よりも長時間子どもと関わっていることが伺える。
ただし日本の父親は育児時間こそ短いものの、家事をする頻度は中国やインドネシアよりも高い。週に3日以上食事の支度をする父親の割合は、日本で25.2%、中国で13.2%、インドネシアでは5.1%となっている。
中国では母親の就業率が高く、母親・父親共に帰宅時間が早いというわけでもない。それにもかかわらず父親の育児・家事の頻度は決して高くない。これは、祖父母世代との同居率が高いことが理由だという。報告書の中で、国立教育政策研究所の一見真理子総括研究官は、こう指摘している。
「調査対象国のうち、中国の有職母親の6割近くは『自分もしくは配偶者の父母』と同居しており、母親の8割以上が日常の子育ての担い手として『祖父母・親せき』を挙げています。(中略)なお、有職母親でわが子と同居していない率が最も高いのも中国(12%)で、祖父母・親戚が母親に代わって子育てしていることがうかがわれます」
ワークライフバランスに満足している母親、日本では約4割、インドネシアでは約9割
働く母親に、自分の子育てに満足しているかどうか聞いたところ「とてもそう思う」と答えた割合は日本ではわずか4%、「ややそう思う」が31.1%で計35.1%の母親しか子育てに満足していないことがわかる。
一方、フィンランドでは「とてもそう思う」が75.7%、「ややそう思う」も23.7%に上っており、計99.4%が「満足」している。インドネシアでも「とても思う」と「やや思う」の合計は96%、中国でも68.3%に上っている。日本の母親の満足度が圧倒的に低いことがわかる。
日本の母親は、ワークライフバランスへの満足度も低い。「仕事と家庭生活のバランスに満足している」人は、「とてもそう思う」と「ややそう思う」を合わせて44.3%に留まっている。一方、フィンランドでは68.4%、インドネシアでは93.8%、中国でも75.4%だ。
ベネッセ教育総合研究所の持田聖子さんは、こうコメントしている。
「『働き方改革』により、今後、日本の父親が、より早く帰宅できるようになり、家事だけでなく、もっと子どもと一緒に過ごし、育児にも、母親と共にかかわれるような環境づくりが望まれます」