株式会社ジャパンディスプレイ(JDI)は、全日本スーパーフォーミュラ選手権に参戦するDANDELION RACINGとともに、『高透過 透明カラーディスプレイ』を使った世界初の実走実験を行ったとアナウンスした。このディスプレイは7月にスーパーフォーミュラのテストで使用され話題となったものだ。
JDIが開発し、実験に使用した高透過 透明カラーディスプレイは7月3日に富士スピードウェイで行われた2019年型スーパーフォーミュラシャシー『SF19』テストの際に、マシンをドライブした野尻智紀が装着していた“スカウター眼鏡型モニター”のこと。
このスカウター型眼鏡モニターが登場した際は、その近未来的イメージや漫画『ドラゴンボール』に登場するスカウターと酷似していたことなどから大きな話題となった。
外から見る限り、テスト走行時にはラップタイムや車両データらしきものが表示されているように見受けられたが、その詳細については伏せられてきた。
JDIの発表によれば、この高透過 透明カラーディスプレイは、同社の独自技術によって80%という高い透過率を達成したディスプレイで、先のテスト時には燃費などの車両情報を表示していたとのこと。
このディスプレイが実際のレースなどで使用されることになれば、従来はステアリングに設けられたモニターで表示されていたデータを「運転時の視界内に情報を表示することでより運転に集中ができる環境」を実現できるという。
JDIとテストを行ったDANDELION RACINGの村岡潔監督は「1000分の1秒を競うスーパーフォーミュラのレースでは、ドライバーは一瞬のミスも許されない緊張感のなか、さまざまな情報を視認し、チームとともに戦います」とコメントしている。
「そのような環境下で少しの視線の動きを抑えることができたら、ドライバーのストレスは大幅に減るでしょう」
「過酷なレースの現場で実験や研究を続けることで、さまざまな分野における高透過透明ディスプレイ技術の可能性を探っていきたいと思います」
またJDIは8月1日、車載用ヘッドアップディスプレイユニットを小型化し、ヘルメットに速度やGPS情報、電話の着信やメールなどの情報を投影する『HUD搭載スマートヘルメット』“スパルタ”も発表している。
JDIは今後もチームと協力して、レースの実装につながるプロダクトの研究を進めていくとのこと。こういった新デバイスの開発は、日本のみならず、世界のモータースポーツシーンでも大きな話題となることは間違いない。実戦投入が実現するかも含め、今後の開発が非常に楽しみなアイテムといえるだろう。
なお、ディスプレイを開発したJDIはソニーと東芝、日立のディスプレイ部門を統合する形で誕生した企業。主にスマートフォン向けの液晶ディスプレイを開発・生産しており、日本で高いシェアを誇る米アップル社のiPhoneにも、JDIの液晶ディスプレイが採用されている。