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吉村界人が物語を駆動させるポジションに 『ケンカツ』吉岡里帆に立ちはだかった次なる試練

2018年08月01日 07:12  リアルサウンド

リアルサウンド

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 新人ケースワーカー・義経えみる(吉岡里帆)が担当する日下部家で、生活保護費の不正受給が発覚。息子の欣也(吉村界人)が、母・聡美(江口のりこ)に無断でアルバイトをしていたのが原因で、えみるとしては、そのバイト代を全額徴収しなければならない。そして、音楽に夢中になっていた欣也は荒れる。えみるの前に立ちはだかる、次なる試練だ。


 7月31日に放送された火曜ドラマ『健康で文化的な最低限度の生活』(カンテレ・フジテレビ系)第3話では、半田(井浦新)から欣也との信頼関係を築くことが先決だと助言を受けたえみるが、京極(田中圭)から譲り受けた古いギターを抱え、欣也への必死な説得を試みる。


 ギターを背負ったえみるは日下部家を訪れるが、欣也は不在。彼のためにギターを持参したことを聡美に伝えるが、「いまは音楽どころではない」と彼女の反応は冷やかだ。えみるが一度、アルバイト代を全額返還する必要はないのだと期待をもたせてしまったことが原因だった。当の欣也は音楽を捨て、かつての仲間たちとバイクでの遊びに興じる。それを目撃したえみるは、自転車で彼らとの追跡劇を繰り広げることとなる。


【写真】欣也演じる吉村界人


 そんな欣也を演じる吉村界人。前回の第2話での彼のイラ立つ表情を見るにつけ、この手のポジションにいま最もハマる俳優だと感じたところであったが、それはこの第3話で確信に変わり、彼の体現する欣也の静かな叫びには強く胸を掴まれる。吉村といえば、今年は出演した映画の公開が『サラバ静寂』『悪魔』『モリのいる場所』と続き、今期は本ドラマだけでなく、『GIVER 復讐の贈与者』(テレビ東京系)や『グッド・ドクター』(フジテレビ系)などにも出演と、急激に頭角を現し、知名度も獲得しはじめている若手俳優のひとりだ。ちょうど1年前には今作と同枠の『僕たちがやりました』(カンテレ・フジテレビ系)に出演。主人公を演じる窪田正孝らと敵対する高校の、ナンバー2の不良役を好演していたことが記憶に新しい。今作で、前回と今回の2話に渡り、物語を駆動させるポジションを見事にまっとうしたことは、先に述べた、彼が名実ともに力をつけてきている大きな証だと取れるだろう。


 えみるの説得の甲斐あって、聡美との面談時に欣也は役所を訪れる。そこでえみるが口にしたのは、「制度があなたをいじめているように感じるかもしれない」、そして「来てくれてありがとう」というものである。えみるの個性的な同期たちもそれぞれ奮闘するなか、これがえみるの、えみるなりの受給者との寄り添い方である。欣也を説得すべく、バイク相手に自転車をこぎ、文字通り身体を張った彼女だからこそ言えた言葉だろう。同席していた半田は、高校生を応援する制度があることも説明し、「夢を諦める必要はない。夢を追うことこそ人間らしい生き方で、その支援をしていきたい」と続ける。


 その後の職場の飲み会で、桃浜都(水上京香)はえみるのことを、「本当に頑張ってた。私にはあそこまでできない」と半田にこぼしていたが、人には人の、それぞれのやり方がある。それは“生き方”においても同じことが言えるのだろう。物語終盤の方で、再び“路上のステージ”に立った欣也が「……それが俺なんだ」と歌っていたが、その言葉は、不器用ながら自分なりのやり方で奮闘する、えみるとも重なっていた。


(折田侑駿)