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日大アメフト問題「理事長は説明責任果たしていない」「機能不全を放置」第三者委が最終報告

2018年07月30日 20:02  弁護士ドットコム

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日本大学アメフト部の悪質タックル問題をめぐり、日大から委託を受けた専門家でつくる第三者委員会(委員長:勝丸充啓弁護士)は7月30日、東京都内で記者会見を開いて、大学によるアメフト部に対するガバナンス体制の検証や、再発防止の対策についての最終報告書を公表した。報告書は、日大の田中英寿理事長について「今なお公式な場に姿を見せず、外部発信もおこなわず、説明責任もはたしていない」と批判している。


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●中間報告は「内田前監督らによる指示」と認定していた

ことの発端は、今年5月6日におこなわれた関西学院大学アメフト部との定期戦で、日大アメフト部の選手が、関学大の選手に対して、危険なタックルで負傷させたことだ。日大アメフト部の内田正人監督(すでに辞任)のほか、学校法人の最高責任者である田中理事長の責任まで追及する声があがっていた。


第三者委の調査期間は、5月31日から7月30日にかけて約2カ月間。日大アメフト部員と教職員を中心とする関係者約100人からヒアリングをおこなったほか、部員約150人全員に対するアンケート調査なども実施した。中間報告(6月29日)では、内田前監督と井上奨元コーチが、悪質タックルを指示していたと認定していた。


●最終報告書「内田前監督は、責任逃れの態度を終始していた」

第三者委は7月30日、最終報告書を日大に提出した。


最終報告書は、悪質タックルを招いた原因・背景について、「内田前監督による独裁体制で学生スポーツ本来のあり方が失われていた」「選手に対して一方的に過酷な負担を強いるような始動実態があり、これはパワハラとも評価すべきものであった」と指摘。内田前監督については、「自己の責任を口にしながらも、その後は、自己の指示を否定するなどして、責任逃れの態度を終始していた」と非難した。


また、大学側については、内田前監督に対するチェック機能もなく、その意向を反映したずさんで不適切な対応を放置していた、当事者意識もなかったとした。問題が大きくなってからも、当時理事だった人物や職員によって、関係者に対して「口封じ」とも呼べる隠蔽工作がおこなわれていたことについては「あってはならないこと」と批判している。


なお、その理事(当時)は5月14日、タックルをおこなった選手とその父親に対して「タックルが故意におこなわれたものだと言えばバッシングを受けることになる」と内田前監督らの関与がなかったかのように説明することをもとめたうえ、「(同意してくれれば)私が、大学はもちろん、一生面倒を見る。ただ、そうでなかったときには、日大が総力を挙げて、つぶしにいく」と言ったという。


さらに田中理事長については、「重要な人事および配置においても事実上絶大な権限と影響力を有していたが、アメフト部に対するガバナンスの機能不全を放置していた」「自ら十分な説明をつくすべきところ、今なお公式な場に姿を見せず、外部発信もおこなわず、説明責任もはたしていない」として、その責任をはたすようもとめている。


●「内田前監督の言い分が正しい」という部員はいなかった

勝丸委員長はこの会見で、日大に欠けていたものとして、(1)学生ファーストの視点、(2)説明責任をはたしていく姿勢をあげた。


勝丸委員長によると、日大アメフト部の選手たちは、大学をかならずしも信用しておらず、第三委の調査についても「不利益を受けるのではないか」と心配していたそうだ。また、アメフト部の全部員に対するアンケートでは、悪質タックルを指示していないという内田前監督の言い分が正しいという人は「誰一人いなかった」という。


また、大学内でなく、社会に対しても説明する責任があったとした。勝丸委員長は「説明責任をはたしていく姿勢があれば、それに向けた、情報収集や丁寧な調査がおこなわれていたはずだ。(今後は)大学内外への説明責任の重要性を肝に命じてほしい」と強調した。


(弁護士ドットコムニュース)