2018年07月30日 17:02 弁護士ドットコム
今年に入り「配偶者控除」および「配偶者特別控除」制度が改正された、というニュースを耳にしたことはあるでしょうか。
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そもそも、「配偶者控除」および「配偶者特別控除」とは、配偶者を養う納税者の税負担を軽くするという制度で、控除の対象となる配偶者がいる場合、所得から一定額を控除することが認められています。もっと端的にくだけた言い方をすると、「夫の支払う税金が少なくなる分、家計が助かる」制度です。
さて、昨年までの内容をおさらいしましょう。なお、便宜上ここでは納税者を夫、配偶者を妻とし、夫の収入はサラリーマンの「給与所得」、妻の収入はパートでの「給与所得」であると仮定します。
まず「配偶者控除」ですが、昨年までは夫の年収にかかわらず、妻の年収が103万円以下であれば対象でした。控除額は38万円で、その分夫の税金が安くなっていたのです。
あるいは、夫の年収が1220万円以下で、かつ、妻の年収が103万円超141万円未満であれば「配偶者特別控除」の対象でした。控除額は妻の年収に応じて3~38万円と決められていました。
もう少し具体的な例を挙げると以下の通りです。
<2017年まで>
・夫の年収:500万円
→妻の年収:103万円以下=配偶者控除(控除額38万円)
140万円=配偶者特別控除(控除額3万円)
141万円=控除なし
・夫の年収:1500万円
→妻の年収:103万円以下=配偶者控除(控除額38万円)
103万円超=控除なし
これにより、いわゆる「103万の壁」を意識して就業調整を行う方もいたのではないでしょうか。
2018年に実施された同制度の改正点は大きく2つ。「夫の年収上限の追加」と「配偶者特別控除における妻の年収上限の拡大」です。
「配偶者控除」は今年から、下記のように夫の年収条件が段階的になり、控除額も新たに設定されました。
<2018年からの配偶者控除(※妻の年収:103万円以下)>
・夫の年収:1120万円以下→控除額38万円
1170万円以下→控除額26万円
1220万円以下→控除額13万円1220万円超→控除なし
一方、「配偶者特別控除」においては、控除の対象となる妻の年収上限が141万円から201万6000円まで引き上げられ、夫の年収条件と控除額も下記のとおりになりました。
<2018年からの配偶者特別控除>
・夫の年収:1120万円以下
妻の年収:150万円以下→控除額38万円
150万円超201万6000円未満→控除額36万円~3万円
・夫の年収:1170万円以下
妻の年収:150万円以下→控除額26万円
150万円超201万6000円未満→控除額24万円~2万円
・夫の年収:1220万円以下
妻の年収:150万円以下→控除額13万円
150万円超201万6000円未満→控除額12万円~1万円
・夫の年収:1220万円超控除なし
つまり、これまで本制度の対象外だった家庭でも、2018年からは「配偶者特別控除」の対象となる可能性が広がったのです。逆に高収入の家庭では控除額が減少したり、控除を受けられなくなりました。
2017年までの例と比べてあらためて説明すると、下記のようになります。
<2018年から>
・夫の年収:500万円
→妻の年収:103万円以下=配偶者控除(控除額38万円 ※変わらず)
140万円=配偶者特別控除(控除額38万円 ※2017年は3万円)
141万円以上150万円以下=配偶者特別控除(控除額38万円 ※2017年は控除なし)
150万円超201万6000円未満=配偶者特別控除(控除額36~3万円 ※2017年は控除なし)
201万6000円以上→控除なし
・夫の年収:1500万円
→妻の年収:103万円以下=控除なし ※2017年は控除額
38万円103万円超=控除なし
ただし補足しなくてはならないのが、この記事で言及したのはあくまで「夫の支払う税金」についてのみということです。
妻が自分のパート収入を増やせば、今度は妻自身が支払う税金が増えたり、パート先によっては社会保険への加入が必須になる、という可能性もあります。すると、結果的には手取りが減ることにもなりかねません。
本制度の改正により、本当に得になるのかどうかーーそれは残念ながら一概には言い切れません。単純にパートを増やす前に、一度各種税金や保険料の確認をし、シミュレーションするのが得策でしょう。
【監修】
小野 郁子(おの・いくこ)税理士
港区品川駅の女性税理士。女性の税に関する専門家として、女性経営者の法人・個人の税務・確定申告・法人化の相談の他、クラウド会計や国際税務についてもサポート。
事務所名 : 小野郁子税理士事務所
事務所URL: https://sub.shinagawatax.com/
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