Hondaワークス「Red Bull Honda with 日本郵便」の挑戦は2位表彰台という結果に
F.C.C. TSR Honda Franceが日本チームとして初のEWC王者に輝く
7月29日(日)、真夏の祭典「鈴鹿8時間耐久ロードレース(鈴鹿8耐)」が決勝日を迎えました。10年ぶりに復活したHondaワークスチーム、Red Bull Honda with 日本郵便は、Hondaにとって4年ぶりの鈴鹿8耐勝利、F.C.C. TSR Honda Franceにとっては日本チームとして初の世界耐久選手権(EWC)タイトル獲得など、各チームそれぞれの想いが込められた戦いが始まりました。台風12号の影響が心配されましたが、ウォームアップランが行われた時間帯は曇り空で、時折り日が差す天候に。路面は昨夜からの断続的な雨で濡れていましたが、走り始めるころには太陽が顔を出すという難しいコンディションとなりました。
すっかり天候が回復し、路面がドライコンデションとなった18ラップ目に高橋巧がピットイン。タイヤを交換してそのままコースインしますが、この際に順位を失い4番手となります。27ラップ目にはギュントーリがシケインで転倒。これによりジョナサン・レイ(カワサキ)がトップに、2番手にファン・デル・マーク、3番手には高橋巧が浮上しました。一方、F.C.C. TSR Honda Franceのフォレイが11番手、それを追いかけるカルロス・チェカ(ヤマハ)が12番手と、EWCのタイトルを争う2台によるバトルも続きます。
スタートから2時間が経過した53ラップ目には、首位にアレックス・ローズ(ヤマハ)、2番手にハスラム、3番手に高橋巧と交代した中上貴晶(Red Bull Honda with 日本郵便)というオーダーでトップ勢が周回を重ねました。
ローズとハスラムのトップ争いが続く中、中上は3番手で周回を重ねながらトップの2人を追いかけます。そんな中、13時56分に起きたヘアピンでの転倒でマシンが炎上したため、セーフティカーが導入。ローズ、ハスラム、中上、そして4番手のイサック・ビニャーレス(au・テルル MotoUP RT)がピットイン。5番手にジョシュ・フック(F.C.C. TSR Honda France)、6番手に亀井雄大(Honda Suzuka Racing Team)が続きました。セーフティカーは69ラップ目に解除され、トップを走るローズとのハスラムの差が0秒179、ハスラムと中上の差は7秒991と、10秒以上短縮されます。接触も起こるなど激しいトップ争いが展開される中、その3秒後方に中上がつけます。70ラップ目に長島が5番手へ浮上、72ラップ目には、アンディ・イズディハール(Honda Asia-Dream Racing)が7番手に。路面が乾いてきたことでスリックタイヤのセットしていた清成は、ラップタイムを向上させ9番手まで浮上してきます。
上位チームのライダー交代が始まる中、Red Bull Honda with 日本郵便も76ラップ目に中上から高橋巧へとチェンジしてコースイン。77ラップ目の順位はレイ、ファン・デル・マーク、そして高橋巧と続き、このトップ3が2分8秒台で周回を重ねていきます。4番手の長島は2分10秒台、6番手のフォレイは2分12秒台、そして7番手のイズディハールが2分11秒台で走行。8番手の日浦大治朗(Honda Suzuka Racing Team)、そして9番手の清成も2分10秒台で後方から追い上げていきます。
162ラップ目、ファン・デル・マーク、ジェイコブセン、渡辺一馬は順位を変えずに周回を重ねます。5番手にフォレイ、6番手にイズディハール、7番手に日浦、9番手には高橋裕紀がつけます。カワサキ、ヤマハがともにライダー交代を終え、ローズ、ハスラムがチェッカーライダーとなりコースイン。ジェイコブセンも中上にライダーを交代します。一方で、F.C.C. TSR Honda Franceのフックは、世界耐久のタイトルを争うライバルと、テール・トゥ・ノーズの争いを繰り広げます。順位を明け渡す結果となりますが、フックは無理に抜き返そうとせずに背後につけ、チャンピオン獲得を見据えた冷静な走行を続けました。
8時間チェッカーを真っ先に受けたのは、YAMAHA FACTORY RACING TEAM。勝利を目指していたRed Bull Honda with 日本郵便は中上が2位でチェッカー。3位がKawasaki Team GREENとなりました。F.C.C. TSR Honda Franceはフックが5位でチェッカーフラッグを通過し、ホームの鈴鹿で見事、世界耐久選手権シリーズのチャンピオンに輝き、日本チームとしては初の快挙達成となりました。7位にHonda Asia-Dream Racing、KYB MORIWAKI MOTUL RACINGは8位、HONDA ENDURANCE RACINGが9位、Team Sup Dream Hondaが24位、au・テルル MotoUP RTは39位、Honda Dream RT 桜井ホンダは54位でチェッカーを受け、MuSASHi RT HARC-PRO.Hondaはリタイアとなりました。
高橋巧|#33 Red Bull Honda with 日本郵便(2位)
「今日はスタート前に雨が降ってきたりとコンディションが安定せず、大変なレースでした。もうちょっと自分もハイペースで周回して、ここまでの差をつけられることなくバトンパスしたかったです。正直、今日のレースに関しては悔しい気持ちしかないので、なにを言っていいか分からないですね。前半の4時間のうち3時間半は走ったのですが、そのあとはチームメート2人に任せてしまったので、そういうところでももっと自分が引っ張っていければよかったなと思います。また来年挑戦できる機会があれば、もっとしっかりと準備をして、万全の体制で挑めるようにしたいです」
中上貴晶|Red Bull Honda with 日本郵便(2位)
「昨年は自分が転倒を招いてしまったので、今年はリベンジの年でした。ライダーは3人ともベストを尽くしたと思いますが、2位で負けてしまったので、悔しい気持ちの方が強いです。ただ、今年HRCが10年ぶりに復活したというのはいいことだと思います。また来年以降チャンスがあれば、打倒ヤマハを目指して戦いたいです」
パトリック・ジェイコブセン|#33 Red Bull Honda with 日本郵便(2位)
「正直言って、今日はかなり難しい一日でした。ウエットでのテストはほとんどできていなかったので、今日のようなコンディションでの走行は、僕にとっては未知の領域だったんです。HRCというファクトリーチームの一員として走ることへの緊張もあったと思います。本来はウエットは僕の得意なコンディションのはずなんですが、今日はいろいろな要因が重なってあまり自信が持てず、本来のポテンシャルを発揮できませんでした。ただ、ウエットでしっかり走りきってチェッカーライダーのタカ(中上貴晶)にバトンを渡せたのはよかったです。2人のチームメートはすばらしい仕事をしてくれました。鈴鹿8耐で表彰台を獲得できたのは僕にとって初めてなので、とてもうれしく思います」
藤井正和|#5 F.C.C. TSR Honda France - 総監督(5位、EWCシリーズチャンピオン)
「まず我々がこの場所に立てたのは鈴鹿のおかげだと言いたいです。鈴鹿で勝ちたい、結果を出したいと思いながら、チャレンジを続けてきました。私は世界中のサーキットで表彰台に登ってきましたが、鈴鹿の表彰台は別格です。来年は鈴鹿8耐の本番でも勝ちたいですね。我々は、トップライダーを揃えているわけでもないし、マシンもトップではない、チームだって特別なものではないです。それでも世界一になれるということを本気で思っていました。このような結果を残せたのは、日本の皆さま“Team Japan”が支えてくれて、後押ししてくれたからです。鈴鹿に帰ってくれば、必ずチャンピオンになれると信じていました。皆さま、本当にありがとうございました」
フレディ・フォレイ|#5 F.C.C. TSR Honda France(5位、EWCシリーズチャンピオン)
「本当に最高の気分です。チームはシーズンが始まってから今まで、どんなときでも常に全力を尽くしてくれました。チームメンバーみんなの努力がこのように実を結んだことを、とてもうれしく思います。しかも、藤井監督やHonda、さらにTSRのホームである鈴鹿サーキットで、大勢の日本人ファンに見守られながらチャンピオンに輝くことができたことも本当にうれしいです。本当にこれ以上ない、特別なロケーションでタイトルを獲得することができました。僕のことをいつも支えてくれている妻にもありがとうと言いたいです」
ジョシュ・フック|#5 F.C.C. TSR Honda France(5位、EWCシリーズチャンピオン)
「僕らはこの瞬間を迎えるために、シーズンを通して全力を尽くしてきました。どのレースでもとにかく勝利を得るために走ってきました。これまで努力してきた全てが、今日こうしてチャンピオンという結果に無事に繋がって、とても幸せな気持ちです。チームのメンバー全員に心からありがとうと言いたいです。藤井監督やTSRのチームスタッフの皆さんには、これまで全日本選手権に参戦しているときから、お世話になっているので、今回TSRのホームコースである鈴鹿サーキットで世界一をプレゼントできて、最高にうれしいです」
アラン・テシェ|#5 F.C.C. TSR Honda France(5位、EWCシリーズチャンピオン)
「僕にとっては、これがEWCでの初のタイトル獲得になりました。本当にすばらしい気分です。2016年のル・マン24時間耐久レースからこのシリーズに参戦させてもらっていますが、まさか3年目でチャンピオンに輝けるとは思いませんでした。このチームから参戦するチャンスをくれた藤井監督に感謝しています。すばらしい日本人ファンが大勢いる鈴鹿サーキットでチャンピオンを決めることができたのも本当に特別でした。今夜、表彰台の上から見た景色は一生、忘れないでしょう。最後に、F.C.C. TSR Honda Franceとブリヂストンにもおめでとうと言いたいです」
玉田誠|#22 Honda Asia-Dream Racing - 監督(7位)
「現状、僕らの実力がまだこの辺だ、ということがよく分かったレースになりました。ただ、7位に入ってシングルフィニッシュという目標を達成できたのはすごくうれしいです。ライダー含め、メカニックみんなががんばってくれました。本当はまだまだいけるんじゃないかっていうところがまだいくつもあるので、そのあたりをしっかり今後は強化していって、次はもっと上を目指せるようにしたいですね」