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加藤シゲアキ、勝利への覚悟を決意する 『ゼロ 一獲千金ゲーム』零役で見せる“強さ”

2018年07月30日 13:42  リアルサウンド

リアルサウンド

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 『ゼロ 一獲千金ゲーム』の第3話が7月29日に放送された。「平成の鼠小僧」とも呼ばれる義賊の宇海零(加藤シゲアキ)が、「ゲームに勝てば人生一発逆転」の命を賭けたサバイバルゲームに参加する。仲間をも蹴落とさなければならない厳しい状況の中で、自分が勝つことより他人が負けないことを選ぶ零。しかし第3話では「他人を守るためには自分が勝たなければならない」と、零がこのゲームに勝ち抜くための覚悟を決める回だった。


参考:『ゼロ 一獲千金ゲーム』原作・福本伸行、加藤シゲアキを絶賛 「一緒にお店を経営しても大丈夫」


 物語前半は、第2話に引き続き「クォータージャンプ」に翻弄される零の姿が描かれる。4方向のうち1つしかないセーフエリアへ飛ばなければ、勝負に勝つことはできない。セーフエリア以外に飛んだ場合、挑戦者は奈落の底に転落する。零は目隠しをされた状態でその場に立たされる。声役と呼ばれる他の挑戦者は、零を自身の方向に飛ぶように誘導し、零を混乱させる。


 クォータージャンプでは顔面に黒い布を被せられているため、声役はもちろん、このゲームを鑑賞している参加者たちにも零の困惑する表情は見ることができない。視聴者だけが、零の困惑した表情を見ることができる。というのも、加藤は黒い背景に顔だけが映し出される状態で演技をしているからだ。零が戸惑うとき、加藤は目線を下に逸らし、眉間にシワを寄せて激しく動揺する。口元は真一文字に結ばれ、深く考え込む零の表情が画面に映し出される。その一方で、学生時代からの同級生・山口カズヤ(増田貴久)に「カズヤを信頼している」と話すときには、外の様子が見えないにも関わらず、声のする方向にまっすぐ目を向けて語りかける。


 結局カズヤは零を騙すことに失敗するが、零がカズヤを最後まで信頼していたことに偽りはなかった。加藤による表情だけの演技と零がカズヤに語る台詞から、強い劣等感を抱えるカズヤの心のわずかな変化を容易に感じとることができる。カズヤがその場から立ち去るときに発した「生きろ」という台詞の重み、これは加藤が零の誠実さを自由のきかない演出の中で演じたからこそ伝わるものがある。


 零の信念や得た確証を語るときも、零は目隠しの中でまっすぐ目を向ける。声役として参加したセイギ(間宮祥太朗)や峰子(小池栄子)の策略を見抜いたとき、零は目線を下に逸らすのではなく、強い目をまっすぐ前に向け、セーフエリアへと飛んだ。彼らに対して向ける目つきには、零の正義感がうまく表現されている。そして、目隠しを取った後、このゲームの主催者である在全(梅沢富美男)に目を向ける零の表情には「強さ」が感じられた。第1話から一貫して、弱きものを助ける信念はあったものの、どこかぼんやりした印象のあった零。しかしクォータージャンプを終えた後の零の目には、第1話~第2話にはなかった「強さ」が感じられる。


 彼の強さは、台詞にも表れていた。零がクォータージャンプを終えた後、標(佐藤龍我)が零とは比べ物にならない早さでセーフエリアに飛び、ゲームに勝った。彼との間に広がる圧倒的な差や、自身の信念との違いに対し、微かに愕然とした表情を見せる零。その日の夜、彼は義賊たちの前で「相手を縛るのではなく、自分を緩める」「川の流れのようにあるがまま受け入れることで、無我の境地に辿り着けると思う」と自分の信念を語る。義賊の仲間たちは、そんな零に「ただ勝負に勝つのは王じゃないと思うんです」「本当の王は、零だってことだよ」と励ます。零の正義感に賛同する者もいる、ということが明確に分かるシーンなのだが、眠りにつく前に零は仲間たちに新たな決意を話す。


「勝負に勝たなきゃ、王にはなれないんです」


 この台詞の直前までは、「自分が勝つことより、他人が負けないことを選ぶ」信念が強かった零。しかしクォータージャンプの後、このゲームの主催者・在全や標と対峙して決意が固まったのだろう。自分の信念を貫き、弱きものを助けるためには、まず在全に勝たなければならない。その決意を固めた零からは、ぼんやりした印象は感じられない。


 加藤が演じるドラマ版の零は、正義感が強く、真面目な青年に感じる。原作に比べ、その真面目さが強調されているように感じたため、零というキャラクター像がぼやけて見えていたのも事実だろう。しかし第3話で見せた加藤の演技から、その正義感、誠実さが強く伝わったのではないかと考える。


 次回第4話では、ヤクザの末崎(ケンドーコバヤシ)と声役として零を欺こうとしたセイギとチームを組むことになる。どのような展開が待っているのだろう。(片山香帆)