インディカー・シリーズは第13戦を迎えチャンピオンシップの行方にも注目が集まる段階となった。
今年は表彰台を一度獲得し、中盤戦は安定したシングルフィニッシュを続けた佐藤琢磨。前戦トロントはスピードがあっただけに惜しいリタイアだったが、このミド・オハイオで巻き返しを図りたいところ。
その勢いは衰えてはいなかった。金曜日のプラクティスは4番手と好調な滑り出しで始まった。午後のプラクティスになると16番手と落ち込んだが、それはレッドタイヤでのスピード不足が原因だった。
土曜日午前のプラクティスでは9番手をマークし、予選に向けて期待を抱かせた。実際に9番手と言ってもトップのチームメイト、グラハム・レイホールからは0.45秒差程度しかなく、相変わらずインディカーが接戦なのがわかるだろう。
予選は波乱含みの展開となった。今年のダウンフォースの減ったマシンは、このミド・オハイオでじゃじゃ馬ぶりを発揮し、スリッピーな路面とも相まって、プラクティスではスピン、コースアウトが多発。全セッションで赤旗が掲示されていた。
当然ここ一発、限界ギリギリの勝負となる予選でも、それは如実に現れる結果となった。Q1ではセバスチャン・ブルデーがターン2でコースアウトし赤旗に。
Q2ではジェームズ・ヒンチクリフがスピンをし、赤旗が出された。その煽りを食らったのが琢磨とチームメイトのグラハム・レイホールだった。
「ちょうどレッドタイヤを履いてアタックしている最中に赤旗になってしまいました。もう4分の3くらいは回っていて、最後まで回っていればファストシックスに進めるタイムだったので、とっても残念ですね……」
琢磨とグラハムはこの赤旗によってQ3に進めず、琢磨8番手、グラハム7番手と4列目にレイホール・レターマン・ラニガンの2台が並ぶことになった。
反対にこの赤旗のおかげで、うまいことファストシックスに進み予選6番手を手に入れたのがマックス・チルトンである。新チームのカーリンとしては予選最高位であり、意気上がる所だったが、これが琢磨にとっては悪循環の始まりとなる。
厳しいレースとなった琢磨の第13戦
日曜日のレースデイ。今年からロードコースのレースでは決勝日朝のウォームアップが廃止になり、いきなり決勝レースに臨むことになる。
琢磨は「ウォームアップがなくなると予選の後にマシンを決勝に向けて合わせ込む作業がなくなってしまい、結局リソースの大きいチームが有利になってしまう」とこのルールに否定的だ。
そしてその心配も現実のものとなってしまうのだった。
レーススタートでうまいポジション取りで5~6番手まで浮上していた琢磨。その後2周目には5番手を走行中に、ターン4でプッシュ・トゥ・パスを使ったチルトンが琢磨のインにダイブ!
チルトンのノーズが琢磨の右リヤタイヤに接触し、琢磨はその場でスピン。大きくポジションを落とした。
17番手からのリカバーとなったが、琢磨は後続集団に入るとペースが上がらず、順位がこう着してしまった。チームはピットのタイミングを変えて10周目にピットインし、ブラックタイヤに履き替えた。
このブラックタイヤでも琢磨のペースは上がらなかった。20番手前後の順位を上がったり、下がったりして周回を重ねた。
ようやくペースが戻ったのは、62周目に最後にレッドタイヤを装着してからで、前の数台は抜いたものの上位を伺うには程遠く、ラップダウンとなってからは、焼け石に水だった。
90周のレースをラップダウンの17位で終えた琢磨。チームメイトのグラハムも9位止まりでレイホール・レターマン・ラニガンとしては地元で惨敗という結果だった。
「ミラーでチルトンが来ているのはわかっていたんですけどね。あの接触は本当に残念。ブラックタイヤに変えてからもグリップが足りずペースが上がらなくて苦労しました。昨日の予選の後、決勝に向けてセッティングを変えたのですが、それが良い方向には働かなかったですね。グラハムも上位に上がっていけなかったし、このような形で終わってしまったのは残念です」と悔しがる。
インディカーはこの後2週間のインターバルを置いて、最後の3連戦が待っている。琢磨が流れをもう一度取り戻し表彰台に返り咲くことを期待したい。