2018年07月30日 10:12 弁護士ドットコム
親が危篤なのに、上司が帰らせてくれなかった。亡くなってから、やっと帰らせてもらったーー。そんな相談が、弁護士ドットコムに寄せられている。
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相談者は仕事中、「母親が危篤だ」という連絡を受けて、上司に伝えたところ、「まだ死んでないんだろう」と言われたという。すぐに帰らせてもらえず、母親が亡くなってようやく帰らせてもらえたが、さらに「死ぬタイミングが悪い」と小言を言われたそうだ。
相談者の仕事は配達で、代わってくれる人もいたにも関わらず、配達をつづけさせられたという。親の死に目に会えなかったことについて、後悔しているようだ。親や兄弟、親戚の「危篤」のときのルールはどうなっているのだろうか。村松由紀子弁護士に聞いた。
「大変な目に遭われましたね。まずは、お悔やみ申し上げます。
いわゆる『忌引き』については、就業規則に定めがある会社が多いのですが、『危篤』については定めがない会社が多いと思います。
就業規則に定めがなければ、一般原則に戻ります。年次有給休暇(有休)の申請をすることになります。危篤の知らせは緊急であることも多く、年次有給休暇の申請が間に合わないこともあるかと思いますが、会社によっては、事後的な申請を認めてくれるところもあるでしょう。
そもそも年次有給休暇がなかったり、申請が間に合わずに認められないという場合は、いわゆる『欠勤』ということになり、その時間分の賃金が支払われないことになります」
「ここで相談者の上司の対応の是非についてですが、労働契約の内容として、勤務時間内の労働提供をすることは従業員の義務ですので、労働提供しないことは債務不履行とはなります。
しかし、労働提供しないことに『正当な理由』がない場合でも、懲戒処分(戒告や解雇など)の対象となるにすぎず、無理に労働提供を迫ることは許されません。
今回のケースでいえば、『帰らせてもらえなかった』というのが、どのような状況であったかによりますが、その場に留まることを強要した場合、業務の適正な範囲を超えており、身体的・精神的侵害としてパワハラにあたると考えます。
また、『死ぬタイミングが悪い』という言葉は非常識ではありますが、その言葉のみで直ちにパワハラにあたらないと思います。しかし、帰らせてもらえなかったことと相まって、パワハラにあたる可能性は高いでしょう。
パワハラにあたる場合は、それによって被った精神的損害を民事上、請求することができます」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
村松 由紀子(むらまつ・ゆきこ)弁護士
弁護士弁護士法人クローバー代表弁護士。同法人には、弁護士4名が在籍するほか、社会保険労務士3名、行政書士1名が所属。交通事故をはじめとする事故、相続等の個人の問題から企業法務まで幅広く扱う。
事務所名:弁護士法人クローバー
事務所URL:http://www.yun-ken.net/