2018年07月30日 10:12 弁護士ドットコム
町内会のDVD鑑賞会を開催する中で出てきたのは、「著作権問題で見たらダメ」という意見。本当にそうなのか、という質問が、弁護士ドットコムに寄せられました。
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相談者は、過去4年ほど町内会で、個人の私物を借りたり、レンタルショップで借りたりしながら、無償でDVD観賞会を開催していましたが、施設の関係者から「DVDを大人数で見るのは、著作権問題で見たらだめですよ!もし、訴えられたら凄い金額を払わされますから見ないほうがいいですよ!」と言われてしまったそうです。
相談者は「営利目的でもなく無償で町内の方に楽しいひと時を過ごして貰おうとしていますのに納得出来ません」と不満そうですが、町内会などでDVD鑑賞会を開くことは本当に著作権法違反なのでしょうか。佐藤孝丞弁護士に聞きました。
「この問題は、著作権のうち、大きくは上映権と頒布権の問題に関わってきます。まずは上映権から考えてみましょう。
DVDを上映する権利は、著作権法上保護されていますが、例外的に、上映権が制限される(つまり、上映しても著作権侵害にならない)場合があります。
その例外の1つが、著作権法38条1項(営利を目的としない上演等)に該当する場合です。この規定は、次の事項を全て満たした場合に適用されます。
(1)公表された著作物であること(2)営利を目的としないこと(3)聴衆又は観衆から料金を受けないこと(4)公に上演し、演奏し、上映し、又は口述する方法であること(5)実演家又は口述を行う者に対し報酬が支払われないこと」
では、今回の相談者の場合、(1)から(5)までの要件は満たされるのでしょうか。
「上記(1)、(4)及び(5)は、問題なく認められるでしょう」
(2)と(3)についてはどうでしょうか。
「(2)(営利目的でないこと)についてですが、直接鑑賞料金を取る目的でなくとも、営利目的とされることがあるものの、本件では、町内会の活動として無償で町民に楽しい時間を過ごしてほしい、という公益目的であるといえるため、(2)は満たしていると考えます。
次に、(3)(料金を受領しないこと)についてですが、この『料金』は、例えば、事前に会費として徴収しておき、会員限りで鑑賞料を無料とする場合も含むとされます。しかし、町内会費は、鑑賞会のためだけに徴収されるものではありませんし、町内会の活動に必要不可欠とまではいえないことから、今回は、(3)も満たしていると考えられます。
ですから、本件鑑賞会は、著作権法38条1項により、著作権(上映権)を侵害しないといえます」
では、もう1つの問題である頒布権についてはどうでしょうか。
「映画のDVDについては、(1)個人の私物を借りても、(2)レンタルショップで借りても著作権(頒布権)侵害が問題になる可能性があります。
映画のDVDは、一般的に家庭内での視聴を想定したものです。町内会での上映を目的としたDVDの貸し出しは、頒布権の侵害となると考えられます。
この場合、頒布権を侵害しているのは、上記(1)の場合はDVDの持ち主、上記(2)の場合はレンタルショップということになります。もっとも、家庭での視聴しか許諾されていないことを知りつつ借りた場合は、町内会やDVDを借りた担当者が損害賠償責任を負う可能性があります」
結局、町内会でDVD鑑賞会をすること自体が上映権の侵害にあたらなくても、使用するDVDによっては、鑑賞会目的で借りることが頒布権の侵害になってしまうということでしょうか。
「先ほど説明した著作権法38条1項は、あくまで上映権等を制限しているものですから、頒布権の制限とは別問題ということになります。上映権の侵害にならないから、上映のために借りても問題ないというわけではないのです」
権利侵害の問題をクリアするためには、どうすれば良いのでしょうか。
「最新作を見せてあげたい気持ちは理解できますが、公共施設等から上映用として貸し出されているDVDを借りたほうが安全と思われます。どうしても上映用ではない最新作がよいのであれば、著作権者に使用料を支払って許諾を得ることになるでしょう」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
佐藤 孝丞(さとう・こうすけ)弁護士
千葉県・東京都を中心に、企業法務一般、特に著作権・商標権・模倣品対応等の知的財産案件に注力。弁理士としても活動中。一方で、不動産法務、相続、交通事故等の様々な案件を取り扱う。弁護士知財ネット会員。
所在エリア:千葉県千葉市中央区
事務所名:新久総合法律事務所
事務所URL:https://www.shinku-law.jp/