F1ハンガリーGPの予選開始前、トロロッソ・ホンダのトランスポーターの2階にあるエンジニアリングルームで、予選前のストラテジーミーティングが開かれた。
フリー走行3回目でピエール・ガスリーが10番手、チームメイトのブレンドン・ハートレーも12番手と、金曜日に比べて、マシンのセットアップは改善されていた。このとき、トロロッソ・ホンダのエンジニアたちは、ドライコンディションでの予選を期待していた。
ところが、フリー走行3回目が終了して間もなく、雨雲がハンガロリンクに近づいてきた。ミーティングで「今日の予選はウエットになる可能性がある」と報告されると、ドライバーから、思いもよらない答えが返ってきた。
「僕たちは雨が降った方がいい」
ハートレーは、予選後にその理由を次のように説明してくれた。
「今年のプレシーズンテストで初めてサーキットでホンダのパワーユニットを走らせたときから、ドライバビリティ(マシンの操作性)に関しては、まったく何も問題はなかった。もちろん、それは今日のようなコンディションでも僕たちのドライビングを助けてくれた。だから、今日の結果はドライバーだけの力ではなく、トロロッソ・ホンダのスタッフ全員の努力の結果だ」
■ライバルにはないホンダパワーユニットの強み
ホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターもPU(パワーユニット/エンジン)のドライバビリティに関しては、自信をのぞかせていた。
「ドライバビリティに関しては、トロロッソ・ホンダとしてスタートした今年の2月からふたりのドライバーとともに、常に改善を図ってきました。さまざまな状況の中で、(アクセルを踏んでもパワーが)着いて来ないような状況もありましたが、その都度、ホンダのエンジニアがドライバーからのフィードバックを受けて、ドライバーが思うようにパワーをデリバリーできるように見直して、ドライバビリティを向上させてきました」
「予選後のミーティンクでもドライバーからは『ドライバビリティはまったく問題なかった。以前の似たような状況と比べても良かった』というコメントをもらいました」
ドライバビリティの向上はどのPUマニュファラクチャーにとっても重要な課題のはず。なぜ、ホンダはドライバビリティに関して、ライバルにも劣らぬ向上を見せているのか。それは、トロロッソとホンダの関係が大きく影響していると思われる。
「PUサプライヤーとしては当然、出力や信頼性の向上も大切ですが、ドライバーと直接、会話しているというところもわれわれの強みです」(田辺TD)
出力や信頼性を向上させるのは、ファクトリーの開発部隊だが、ドライバビリティに関してはドライバーのフィードバックが何よりも大切となる。ホンダがPUを供給しているのはトロロッソのみ、ドライバーとエンジニアの関係は、ほかのPUマニュファラクチャーに比べて、より密接な関係を築くことができやすい環境となっていた。
目立たない日頃の努力が実を結んだハンガリーGPの予選6番手&8番手だった。