2018年07月29日 10:32 弁護士ドットコム
アメリカで急成長中の不動産会社「eXp Realty」は、現実世界にオフィスがないという。オフィスはバーチャルな世界の中にある。
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海外ネットニュースなどによると、「eXp Realty」の社員(アバター)は出社(ログイン)し、バーチャルな世界で会議や研修をおこなっている。ほかの社員(アバター)とはバーチャルな世界で顔を合わせ、コミュニケーションを取る。会議室や休憩室には、アバターが向かう。まるで、オンラインゲームのような世界だ。
バーチャル出社が導入されれば、満員電車で通勤するストレスもなくなり、天候に左右されることもない。一見、魅力的な働き方だが、もし日本でも導入された場合、起こりうる問題や、メリットはどのようなものなのだろうか。藤井総弁護士に聞いた。
「まず法的な問題ですが、既に日本でも導入が進んでいるリモートワークの場合と変わりません。メールやテレビ会議を使ってリモートワークで仕事をするのも、アバターを使ってバーチャル出社をして仕事をするのも、物理的に出社せずに仕事をする点で同じだからです」
リモートワークを導入する場合、法的にどんな問題があるのだろうか。
「以前に私が下の記事で解説したとおり、(1)労働条件の見直しや変更、(2)労働時間の把握、(3)セキュリティ対策です」
(自宅やカフェでの仕事もOK、会社が「リモートワーク」を実現させるための3つの課題)
https://www.bengo4.com/c_1015/n_4158/
それらの問題をクリアしてリモートワークを導入する企業は増えているのだろうか。
「はい、総務省が毎年公表している情報通信白書の平成30年版(http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/pdf/index.html)を見ても、企業のリモートワーク(テレワーク)導入率は増加傾向にあります(P182)。
ちなみに私は、ITツールを駆使することで面談での打ち合わせや紙の書類をほとんど利用せずに、世界を旅しながら仕事をしていることが多く、2017年は111日間海外に滞在していました。まさに私自身、リモートワークを実践しています」
そんな藤井弁護士として、バーチャル出社をどのように考えているのか。
「バーチャル出社は、これまでのリモートワークの課題を解決できる可能性があります」
これまでのリモートワークの課題とは?
「1番目は孤独感です。周りに誰もいない環境は集中できますが、日中誰とも喋らずにパソコンに向かっていると、やはり寂しくなります(笑)。
2番目は雑談が無くなることです。何気ない雑談から同僚のことを深く知ってチームワークが高まったり、面白いアイディアが浮かんでくることもありますが、メールでは雑談ができません。
3番目は声のかけにくさです。ちょっと困ったときや知りたいときに、その場に相手がいれば気軽に声をかけられますが、わざわざメールで聞くのは面倒ですし、いつ答えが返ってくるかもわからないので、そのまま飲み込んでしまうでしょう」
バーチャル出社はそれらの課題を解決できるのだろうか。
「同僚のアバターが周りにいて動いたり会話をしたりしていれば、皆と一緒に仕事をしている感は出ますよね。アバター同士のチャット形式の会話なら雑談もしやすいですし、声もかけやすいです。この感覚は、アメーバピグのようなアバターでのコミュニケーションを経験した世代にはしっくり来ると思います」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
藤井 総(ふじい・そう)弁護士
「世界を便利にしてくれるITサービスをサポートする」ことをミッションに掲げて、ITサービスを運営する企業に「法律顧問サービス」を提供している。ITサービスを提供する企業やIT関連部門、IT関連組織が法律顧問サービスの主な導入企業になり、その業種はASPサービス事業者、ISP事業者、EDI事業、ハードウェアメーカー、コンサルティングファーム、海外政府系機関等、多様。
事務所名:弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所
事務所URL:https://itbengoshi.com