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山田孝之は“目と口元”だけでキャラクターを表現する 『dele』圭司役で見せる新たな一面

2018年07月28日 13:52  リアルサウンド

リアルサウンド

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 7月27日より放送が始まった新ドラマ『dele(ディーリー)』(テレビ朝日系)。主人公・坂上圭司(山田孝之)はクライアントから依頼を受け、死後に残るデジタル記録“デジタル遺品”を抹消する仕事を請け負っている。第1話で、圭司は姉・坂上舞(麻生久美子)が連れてきた何でも屋の真柴祐太郎(菅田将暉)とバディを組むことに。依頼人のデータを内密に削除してきた圭司に対し、祐太郎は亡くなった人の隠された真相を知るためにデータを紐解くことを主張する。デジタル遺品に隠された謎が紐解かれ、クライアントの人生が浮き彫りになっていくのがこのドラマの醍醐味だ。


参考:山田孝之×菅田将暉の絶妙なコンビネーションを堪能できる? 『dele』の軸となる男の“絆”


 今回注目するのは、圭司を演じる山田孝之である。「カメレオン俳優」と呼ばれる山田の魅力が存分に詰まった第1話だった。


 山田が演じてきたキャラクターは実に幅広い。映画『電車男』では、むさ苦しい印象があるが心優しいオタクの青年を演じた。一方『クローズZERO』では芹沢という強面のキャラクターを演じ、『闇金ウシジマくん』のダークなキャラクターも印象強い。テレビドラマでは『白夜行』(TBS系)でのシリアスな役柄と『勇者ヨシヒコと導かれし七人』(テレビ東京系)でのヘタレな役柄に激しいギャップを感じる。どんなキャラクターを演じさせても、山田孝之という人物を感じさせない自然な演技が魅力だ。過去作品を振り返ってみても、同じ人物が演じているようには思えない。キャラクターごとに色を変える、まさにカメレオンだ。


 そんな山田が今回演じる圭司は、公式サイトで「常に冷静沈着、偏屈でプライドが高いが、洞察力・観察力は優れている」と紹介されている。第1話、はじめて圭司が登場したシーン、圭司は部屋に入ってきた姉・舞や祐太郎の姿に一度も目を見やることなく仕事に向かい続ける。舞に話しかけられても、彼はパソコン画面に目を向けたままだ。目線を合わせることなく言い捨てる彼の物言いからは、自分のテリトリーに足を踏み入れられたことに対する苛立ちや不機嫌さが伝わってくる。圭司、舞、祐太郎が一堂に会するこのシーンは、決して長くない。しかしこの数秒のやりとりだけで、圭司のキャラクター像が容易に理解できたはずだ。


 バディを組むことになった祐太郎を見る圭司の目も特徴的だ。祐太郎は圭司とは正反対のキャラクターで、人の懐にすっと入り込む社交性のある青年だ。そんな祐太郎をジロリと睨むように見る圭司。ほんの一瞬、話しかけてきた祐太郎を追い返すようにして睨みつけたその目は、圭司に足りない社交性を巧みに表現している。


 山田が圭司のキャラクター像を演技で伝えるのに使うのは「目」だけではない。口元にも注目だ。クライアントの死亡確認をするため、故人の情報を基に自分を金貸しだと偽って電話をかける祐太郎の姿を見たとき、圭司の口元が僅かに笑みを浮かべる。笑みを浮かべるとはいえ、好意的な笑みではない。「こいつは使える」といった笑みが、圭司の偏屈さを際立たせる。


 山田は、目を、口をと意識して演技している訳では決してない。圭司を演じるうえで、彼の癖をごく自然に体現しているだけなのだ。早口でボソボソと抑揚なく話す圭司について、コメントで「圭司として言葉を発したとき、『やっぱり、この人はゆっくりしゃべる人じゃない。抑揚無く早口でしゃべらなきゃ、らしくないな』と」と話す山田。「演じる側としては大変ですけど、そこがまた面白いところでもありますね」と答える山田からは、“坂上圭司“ならどのように話すか、どのように動くかを考えている様子が伺える。目線を合わせることなく、どんな人に対しても言い捨てるように話す圭司。故人の隠された真相に躍起になる祐太郎に対して「いちいちうるせえな」と呟く圭司からは、「この人と関わりたくないな」と思わせてしまうヒヤリとした空気を感じた。それでも「人をほんの少し優しくする」男・祐太郎との出会いが、圭司の心を大きく変えていくのだろう。


 第1話最後、故人の本当に隠したかったであろうデータについて祐太郎に伝えないと決めた圭司。舞からの「なぜ?」という問いかけに、相も変わらずぶっきらぼうな物言いで「そんなもん見せたら、あいつ本気で泣きそうな気しない?」と答える圭司からは、すでに祐太郎と出会ったことに対する変化が感じられる。冷静沈着だが、偏屈な圭司の心が、どのように紐解かれていくのか、次回以降も楽しみだ。(片山香帆)