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“男性声優×ラップバトル”ヒプノシスマイクの音楽的魅力ーーシリーズ最新作から考察

2018年07月28日 11:22  リアルサウンド

リアルサウンド

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参考:2018年7月30日付週間アルバムランキング(2018年7月16日~2018年7月22日・ORICON NEWS)


 2018年7月30日付のオリコン週間アルバムランキングには、K-POPのボーイズグループ・SEVENTEENの5thミニアルバム『YOU MAKE MY DAY』が4位にランクイン。


(関連:月蝕會議、Avec Avec、サイプレス上野……『ヒプノシスマイク』支えるクリエイター陣に注目


 暑い夏にぴったりのダンサブルなサマーチューンが収められた好盤だ。5位にランクインしているTWICEの2ndスペシャルアルバム『Summer Nights』と並んで、K-POPのバラエティに富んだビートが夏を彩る。


 また、8位にはダンスボーカルグループ・Leadによる2年ぶり8作目、『MILESTONE』がランクインした。ミッドテンポのダンスナンバー「Bumblebee」や、夏のムードを盛り上げるレゲトンの「Backpack」など、安定したクオリティの一作。


 『球体』が話題を呼んでいる三浦大知や、「U.S.A.」のバズも冷めやらぬDA PUMPといったダンスボーカルアーティスト/グループが存在感を見せるなかの好リリースだ。


 注目したいのは、3位にランクインしたFling Posse・麻天狼『Fling Posse VS 麻天狼』。2017年秋に始動した、男性声優12人をフィーチャーしたラップバトルプロジェクト・ヒプノシスマイクシリーズの最新作だ。当初から、人気男性声優×ラップバトルという異色さやディストピア的な世界設定が話題を呼んでいたが、今年に入っていよいよ人気が爆発した。


 舞台は、武力による戦争が根絶され、人の精神に干渉する特殊なマイク「ヒプノシスマイク」を通じたラップバトルがその代わりを果たすようになった、近未来の日本。そこで、12人の男性キャラクターが3人ずつのチームを組み、イケブクロ、ヨコハマ、シブヤ、シンジュクの4つのディビジョンに分かれ、ラップで自ディビジョンの領土をかけたバトルを行うという設定だ。


 ヒップホップはもともと地元に対する帰属意識が強く、それぞれの地元を“レペゼン(代表)”する文化がある。ヒプノシスマイクは、そうした背景を“領土争い”という設定に巧みに落とし込んだうえで、ディビジョンごとのカラーを明確にしたキャラクター造形・サウンドにも活かしている。


 たとえば、本作に収録されたシブヤディビジョン(=Fling Posse)の楽曲「Shibuya Marble Texture -PCCS-」は、ファッショナブルで賑やかなストリートとしてのシブヤのイメージを、色彩豊かでメロディアスなビートミュージックに落とし込んでいる。編曲を担当したAvec Avecの洒脱な作風が存分に発揮された佳曲だ。


 ほか、注目のプロデューサーや参加ラッパーについては、こちらの記事(月蝕會議、Avec Avec、サイプレス上野……『ヒプノシスマイク』支えるクリエイター陣に注目)でも知ることができるので参照してほしい。


 また、声優陣によるラップが、いわゆるラップ的な上手さとは異なる巧みさを見せていることも、ヒプノシスマイクの見逃せない魅力のひとつだ。


 ビッグネームや実力派を作詞・作編曲に招いていることも、このプロジェクトの人気を後押ししてきた。一方で、曲ごとに異なるラッパーが詞を提供していたり、あるいは複数のキャラクターによるマイクリレーをひとりのラッパーが担当していたりと、ラッパーの個性のキモである“フロウ(譜割り、節回し)”がキャラクターごとに安定しない傾向がある。


 そこを見事にカバーし、作品世界に説得力を与えているのが、提供された詞を吸収したうえで、キャラクターの性格や感情の起伏を感じさせる演技を交えた高度なラップを披露する声優陣の力量だ。特にKEN THE 390が作詞を担当した、本作収録のバトル曲、「BATTLE BATTLE BATTLE」は、声優ならではのスキルを堪能するにはもってこいの一曲。


 これまでの6枚のリリース作には、各キャラクターのソロ曲からバトル曲、ディビジョンごとのテーマ曲が収められているほか、長尺のドラマパートも収められている。楽曲を聴いてピンときた人は、ぜひドラマパートもじっくりと聴いて、作品世界に浸ってみてほしい。(imdkm)