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枝野代表「3時間演説」緊急出版、一晩でAmazon1位に 政治家発言の著作権は?

2018年07月27日 20:22  弁護士ドットコム

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立憲民主党の枝野幸男代表が7月20日、安倍内閣の退陣を求めた内閣不信任決議案を提出するにあたり、2時間43分にわたって行った演説が緊急出版されることになった。7月26日にAmazonの予約ページが公開されると、一夜にして総合ランキング1位に躍り出た。


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この演説は、今国会事実上の閉会となった日、多くの被害が出た西日本豪雨災害への対応が求められる中、不急のカジノ整備法案を成立させようとしているとして、安倍内閣を強く批判したもの。演説は約2時間40分にも及び、ネットで話題となっていた。発売元の扶桑社では、「またSNSで発表しただけにもかかわらず、予想以上の反響で驚いている」と話している。


●「予想外の反響、背景には現政権や国会、既存メディアへの不満」

出版される本のタイトルは「枝野幸男、魂の3時間大演説『安倍政権が不信任に足る7つの理由』」。編集を担当するネットメディア、ハーバービジネスオンラインの高谷洋平編集長によると、当日の国会審議を視聴中、同サイトの執筆陣から勧めがあり、出版化を決意。「演説の内容をさまざまな方に見てもらいたいと思い、とにかく早めに出すことを優先しました。最短で行ける日程で進行したため、こうしたタイミングになりました」と明かす。


解説には、労働問題の専門家である上西充子・法政大学教授や政治学者の田中信一郎・千葉商科大学特別客員准教授らが担当する。上西教授は安倍内閣が進めてきた高プロ制について、批判を行ってきた。初版部数は1万5000部という。


出版の公表から一晩で「Amazon総合1位」となったことについて、高谷編集長は、「予想以上の反響で驚いています。ただ、この背景には現政権の不誠実な答弁やさまざまな疑惑・不祥事への対応、あるいは国会や民主主義が崩壊していること、そしてそれを報じる既存メディアの姿勢に不満を抱いていた方が一定数いたのではないかと思っております」と話している。「主義主張・思想信条に関わらず多くの方に読んでもらい、『国会とは』『民主主義とは』という議論のきっかけになればいいと思います」


●国会議員の発言にも著作権はある?

今回の出版にあたり、立憲民主党の許諾は得られているが、第三者が国会議員の演説を出版することは可能なのだろうか。


著作権法第40条(政治上の演説等の利用)では、「公開の場で行われた政治上の演説や陳述、裁判での公開の陳述は、ある一人の著作者のものを編集して利用する場合を除き、方法を問わず利用できる」「議会における演説等は、報道のために新聞等への掲載、放送等により利用することができる。同様の目的であれば、翻訳もできる」としている。


つまり、原則的には、自由に使用できるとされている。国会での発言などが収録されている国会会議録検索システムのホームページでも、発言の著作権は原則としてその発言者にあるとしながら、「国会会議録の性格上、個々の発言の中には、『政治上の演説』として著作権者の許諾なく利用できるものがあります」としている。


しかし、一方で、「同じ発言者の発言を集め、『○○氏演説集』などとして編纂する場合等には許諾が必要」という。国会会議録検索システムを所管する国立国会図書館の議会官庁資料課では、「『著作権者の許諾が必要か否かについては、国立国会図書館が判断することはないので、ご自身でご確認をお願いしています」と話している。


(弁護士ドットコムニュース)