スポーツ庁と文部科学省は7月26日、全国の大学と高等専門学校に東京五輪・パラリンピックの日程に配慮して2020年の授業スケジュールを作成するよう求める通知を出した。
通知では、開催期間中に交通機関で混雑が予想されることや、学生がボランティアに参加する意義を説明。大会に重ならないよう、授業や試験日程を繰り上げたり、祝日授業を実施することができると提案した。
学生ボランティアを確保するために学業を蔑ろにするかのような通知に対し、一部の教員やネットユーザーからは批判の声が上がっている。
「ボランティア活動を授業の一環として位置付け、単位を付与することができる」
通知では、学生が五輪・パラリンピックに参加することの意義についてこう説明している。
「競技力の向上のみならず、責任感などの高い倫理性とともに、忍耐力、決断力、適応力、行動力、協調性などの涵養の観点からも意義があるものと考えられます。さらに、学生が、大学等での学修成果等を生かしたボランティア活動を行うことは、将来の社会の担い手となる学生の社会への円滑な移行促進の観点からも意義があるものと考えられます」
さらに4月下旬に出された通知では、
「各大学等の判断により、ボランティア活動が授業の目的と密接に関わる場合は、オリンピック・パラリンピック競技大会等の会場や、会場の周辺地域等におけるボランティア活動の実践を実習・演習等の授業の一環として位置付け、単位を付与することができる」
と説明していた。学生のボランティア参加を促すために、単位認定を大学に求める内容だ。
東京オリパラ競技大会組織委員会は、大会運営を支える「大会ボランティア」に対し、1日8時間・10日間以上の参加を求めている。東京都オリパラ準備局が募集する「都市ボランティア」も1日5時間以上・5日間以上の参加が応募の条件だ。
拘束時間が長いボランティアは、学生が主力になる可能性が高い。計11万人に上る人員を確保するためにも、大学の協力が欠かせないのだろう。
「大学は粛々と講義を続けるべき」と反発する大学教員も
一部の大学はすでに対応を始めている。国士舘大学は、2020年は7月23日までに春期授業・定期試験を終了し、7月24日~8月9日は「特別課題研究期間」として授業は行なわず、課題で対応するという。さらに事前研修への参加で授業を欠席する場合は公欠として取り扱う。
明治大学も授業スケジュールの繰り上げを決定。五輪開催期間と重複しないよう、ゴールデンウィーク中の全ての祝日に休日授業を実施するという。ボランティアで授業や試験を欠席する学生に対しても、届け出があれば一定の配慮を行う。
しかし一部の教員からは反発の声も上がっている。名古屋大学大学院の日比嘉高准教授はツイッターで、「文科は、大学に授業回数15回守らせシラバス出させて縛り付けておいて、同じ口で『五輪のために授業避けろ』だと?」と怒りを露わにしていた。
大阪大学大学院の菊池誠教授も「講義回数の厳格化を進めて休講しづらくしたのは文科省なので、そんなわけのわからない要求に応える必要はないのです。大学は粛々と講義を続けるべきですね」と批判していた。
また、ネットユーザーからは「学徒動員」「大学生をボランティアという名のタダ働きの労働力としてアテにしていることが異常」と批判の声が上がっている。