トップへ

患者の“たった1人の医師”となった上野樹里 『グッド・ドクター』“救えなかった命”が伝えるもの

2018年07月27日 16:42  リアルサウンド

リアルサウンド

写真

 「苦しんでいる患者が目の前にいるのに、平気で見捨てる医者に私はなりたくありません」。『グッド・ドクター』(フジテレビ系)第3話では、瀬戸夏美(上野樹里)の患者を救いたいという思いが強く浮き彫りになった。


 夏美は、東郷記念病院の小児科に入院し、翌週に手術を控えた舞(中島琴音)の不安をなくそうと、1冊の絵本を手渡す。新堂湊(山崎賢人)は絵本のイラストを見て「ソラマメですか」と近づき、夏美は「腎臓でしょ。ちゃんと見てよ」と訂正する。「舞ちゃんが元気になるために」というタイトルがついた手作りの絵本は、夏美が舞のために作ったもの。「やっぱり、ソラマメです」。もう一度湊が言うと、「ソラマメだ、ははは」と近くにいた子供たちも駆け寄り、湊が小児科の子供たちとすっかり打ち解けてきている様子だ。


 東郷記念病院に絞扼性イレウスの6歳の美結(竹野谷咲)が運び込まれてくる。美結は、病院をたらい回しにされ、既に発症から4時間以上が経過しており、病院に到着した直後には、間もなく心停止してしまう。夏美の懸命な心臓マッサージで一命を取り留めるも、すでに手遅れの状態だった。


 小児外科医を束ねる科のエース高山(藤木直人)は当時、病院には不在。間宮科長(戸次重幸)は、患者を死なせた場合に病院の名が傷つくことを恐れ、美結を他の病院に回すよう告げる。しかし、夏美は自分が手術をすると決意する。夏美は、患者を「助けたい」という気持ちを強く持つ医師であり、小児科内で唯一、湊に理解を示している存在だ。それは、湊が子供たちを救いたいと強く願う気持ちが、自らの思いと同じであることを感じているからなのだろう。


 だが、夏美の懸命な処置も虚しく、結果的に美結を助けることはできなかった。美結の両親である英雄(高橋洋)と詩織(前田亜季)は、手術前に「娘を助けてください」とすがりついていた様子とは一変、「お前が美結を死なせたんだろう?」と夏美に掴みかかかる。


 はたから見れば、普段通りに仕事に打ち込んでいた夏美。ソラマメの絵本を読んだ舞から、「手術を受ける」という知らせを受ける。「手術は、夏美先生がしてね」と舞から直接告げられると、夏美は少し驚きながらも嬉しい表情を見せるが、「夏美先生なら怖くない。手術も絶対うまくいくでしょ?」という言葉に、美結を救えなかったときの思いが蘇ってくる。


 「瀬戸先生はどうしていつも通りに仕事ができるんですか。僕は悲しいです」。いつものように、湊からどストレートな質問が飛んでくる。しかし、この問いは、夏美が自分自身に問いかけているものでもあった。「医者が悲しんだところで、美結ちゃんは帰ってこない」。一度はそう答える夏美だったが、「私はあの子に何もしてあげられなかった」と話し始める。「瀬戸先生は救おうとしました」という湊に「助けなきゃ意味がないの。ごめん、あなたにも辛い思いをさせて」と伝える夏美。その言葉からは、周りには見せないだけで、心の奥底に抱え込んでいる深い悲しみが感じられた。


 美結への思いからとった湊の行動により、英雄と詩織は「少しだけ救われた」と言い、夏美を責めることで美結を失った悲しみを埋めるしかなかったと謝罪をする。「あのとき、美結にとってのお医者さんは、瀬戸先生、あなただけでした」。夏美は涙を流し、そして、その言葉に後押しされるかのように、舞の手術を執刀することを決意した。


 病院内で長く担当している患者や、急患で運ばれてきた患者、そこに違いはなく、一人ひとりの小さな命と大切に向き合ってきた夏美。湊という存在もまた、夏美を自らの本心と向き合わせてくれる人物と言える。今後、2人が医師としてどういった姿勢で患者と寄り添っていくのか、引き続き注目したい。(文=大和田茉椰)


※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記