2018年07月27日 16:12 弁護士ドットコム
血糖値を下げるホルモン「インスリン」が体内で作れない1型糖尿病の女性患者が、障害基礎年金の不支給処分の取り消しを求めて7月27日、東京地裁に提訴した。1型糖尿病患者が、障害基礎年金の支給を求め提訴するのは初めてという。
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提訴後に東京・霞が関の司法記者クラブで開いた会見で、原告の西田えみ子さん(47)は「1型糖尿病は国や行政に理解されていないというのが率直な気持ち。訴訟を通じておかしいと思うことや不安に思うことを訴えていきたい」と話した。
訴状などによると、西田さんは2017年2月、障害年金1級または2級に該当するとして障害基礎年金の申請を行なったが、同年3月に「該当しない」として不支給の決定を受けた。同年7月には不服を申し立てる審査請求を行なったが、今年1月末に却下された。
障害基礎年金は国の基準で障害等級1級、2級を対象に支給される。糖尿病に関する認定基準は、3級の基準しか明確に定めておらず、1級または2級に該当する具体的な判断基準は「症状、検査成績及び具体的な日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定する」としか規定されておらず、原告側は「明確性を欠いている」と主張。
また、「てんかん」の認定基準は、意識障害が月1回以上生じるなどの症状があれば障害年金1級、年2回以上ある場合は2級に該当するといった基準がある。西田さんは年20回ほど意識障害を起こしており、「当事者の意識がないまま意識障害を起こす点で、同じ障害の状態を示すのにも関わらず、糖尿病の認定基準では不支給となるのは不公平で明らかに不合理」としている。
弁護団の藤谷優子弁護士は「1型糖尿病の当事者の障害基礎年金の受給可能性を排除する認定基準は違法で、西田さんの障害の状態は2級相当といえる」と話した。
1型糖尿病は、運動不足や肥満など生活習慣が影響すると言われている2型糖尿病とは異なり、小児期に発症することが多い病気。患者は体内でインスリンを作り出すことができないため、注射やポンプなどで日常的にインスリンを体外から投与し、血糖値を管理し続ける必要がある。そのコントロールは難しく、高血糖と低血糖を繰り返し体調が安定しないことも多いが、根本的な治療法は見つかっていない。
西田さんは、幼稚園年長の頃に1型糖尿病を発症。体調が悪い日は、月に数回は極度の低血糖状態になり、意識障害を起こす。現在はNPO法人の相談員を務めているが、軽い低血糖状態は毎日あり「1日の中でも何回もあるし、何時間も続くときもある。なんの作業もできず、症状自体がとても辛い」と話す。また、月に2万円強かかるインスリン注射代も自己負担だ。
昨年11月には、関西在住の1型糖尿病患者が、それまで受けてきた障害年金の支給を打ち切られたとして、打ち切り処分の取り消しを求める訴訟を大阪地裁に起こしている。
(弁護士ドットコムニュース)