ブランパンGTシリーズ・エンデュランスカップにアストンマーチンで参戦しているR-モータースポートを運営するAFレーシングAGは7月26日、ドイツのHWA AGと戦略的パートナーシップを締結しジョイント・ベンチャーを立ち上げると発表した。この動きはアストンマーチンのDTM参戦に向けた布石との見方が濃厚だ。
スイスに拠点を構えるAFレーシングAGは、ブランパンGTエンデュランスカップや2019年のバサースト12時間に参戦するR-モータースポートを運営。同チームはブランパンGTでアストンマーチンの実質的ワークスチームとして活動している。
そのAFレーシングAGとパートナーシップを結んだHWA AGは、メルセデスのファクトリー・プログラムを担う前線部隊。DTMドイツ・ツーリングカー選手権ではメルセデス陣営を担うほか、F3向けのメルセデスエンジンを製作するといった活動を行っている。
この両者は「モータースポーツと自動車業界でのプロジェクトを推し進める」べく、戦略的かつ革新的パートナーシップを結んでジョイント・ベンチャーを立ち上げると発表。AFレーシングAGが持つカスタマー網と、HWA AGのレーシングカー開発/製造能力を活用していく方針を明かした。
R-モータースポート代表のフロリアン・カメルガー博士は「HWA AGとジョイント・ベンチャーを立ち上げることで、自動車製造・販売とモータースポーツ活動の両面において、会社を成長させることができるはずだ」とコメントした。
「我々の第一目標は、国際的なモータースポーツで地位を高めて成功を手にし、パートナーのために我々が強さと競争力のある生産性を持ち合わせていることを示すことだ」
またHWA AGのウルリッヒ・フリッツ代表も「HWA AGを取り巻く市場環境、すなわち国際的なモータースポーツの世界は急速に拡大を続けている」と述べている。
「AFレーシングAGは若く、かつ活動的な企業だ。そして彼らも新たな方向性や(活動の)機会を伺っていた。HWA AGが長年モータースポーツで培ってきた経験と、AFレーシングAGが組み合わさることで、今回のジョイント・ベンチャーは大きなポテンシャルを秘めるものになる」
■アストンマーチン、DTM参戦に一歩前進か
26日の発表では「目標とするマーケットはモータースポーツ界でベンチマークとなること、小規模生産できるプロダクトを作ること」とされるに留まり、具体的な参戦カテゴリーは示されていないが、イギリスのAUTOSPORT.comなどはアストンマーチンのDTM参戦へ向けた一歩との見方を示している。
ドイツで根強い人気を誇るDTMでは、2018年限りでメルセデスが活動を終了。スーパーGTと作り上げてきた“クラス1規定”を導入する2019年からは、アウディとBMWの2メーカーのみが参戦する。
この状況を打破するべく、DTM側は参戦台数拡大を目指しており、現在はワークスチームのみ参戦を認めているレギュレーションを改定し、カスタマーチームにも門戸を広げようとしているという。
そして、このカスタマーチーム枠での参戦を検討していると報じられたのがアストンマーチンだ。報道では、同社がF1でタッグを組むレッドブルとのコラボレーションを持ち込み、チーム運営を関係が深いR-モータースポートに任せる形でDTM参戦を検討しているとされている。
上述したように、今回AFレーシングAGがタッグを組んだHWA AGはメルセデス陣営の一角を担っていて、メルセデスが去る2019年からは活動に余裕ができる状態。そのため、今回の提携はDTMに向けた布石とみられているのだ。
なお、先の報道ではアストンマーチンは自社製エンジンではなく、F1で来季から手を組むホンダからエンジンを譲り受ける可能性も指摘されている。