今年のドイツGPはこれまでにないほど、ドイツ色を前面に出した演出を行なっていた。スタート直前には、最終コーナーと1コーナーのスタンドにいる観客が全員3色のカードを掲げて、巨大なドイツ国旗をスタンド全体でデザインしていた。
ホッケンハイムリンクでのドイツGPの契約は2008年から10年間。当初はニュルブルクリンクとの隔年開催だったため、開催自体は5回という約束だった。その後、ニュルブルクリンクが財政悪化によって2013年限りでF1から撤退。2015年と2017年はドイツGPは開催されず、今年がホッケンハイムリンクでの最後の開催となっていたからだ。
ホームストレートのグランドスタンドには、『HEIM SPIEL』(ホームゲーム)というカードを掲げて、地元ドイツのセバスチャン・ベッテルとニコ・ヒュルケンベルグを応援していた。
通常、契約最終年のグランプリが契約を延長する場合、最後のグランプリが終了する前までになんらかの発表が行われ、それが行われなかった場合は、翌年以降の開催はないとケースがほとんどだ。
要するに、「来年は開催しません」という発表はない。もし、最後のグランプリが終わるまでに、何も発表しなかった場合は、そのへんの事情を汲んでほしい、というのがこの世界の常識だ。
したがって、日曜日の夜、メディアセンターを後にするときも、スタッフたちへのあいさつもいつものように「また来年」ではなく、少し気を使ってほとんどの人が「またいつか会おう」と言い、ホッケンハイムリンクのスタッフも「そうなればいいね」と返していた。
■2019年ドイツGP開催についての交渉は継続中か
しかし、不思議だったのは、このドイツGPのパドックにはリバティ・メディアの首脳陣がいたことだった。通常、契約が延長する見込みがない最後のグランプリに、首脳陣が来るというのは珍しい。つまり、ドイツGPの交渉はまだ終わっていない可能性が考えられる。
というのも、FOMはドイツGPの直後にマイアミGPの2019年開催断念を発表。現時点で日本GPも来年以降の開催について交渉中で、イギリスGPも2019年が現在のところ契約最終年となっている。したがって、FOMとしては簡単にドイツGPを切れない事情がある。
ただし、気になるのは、来年のスケジュールである。それは先週、イギリスGPの主催者が来年のイギリスGPの日程を「7月12~14日」と発表したからだ。おそらく今年の3週間連続開催がかなりハードなスケジュールだっため、来年はオーストリアGPとの間に1週間のインターバルを設けたかったのだろう。
それが本当であれは、イギリスGPの後、7月に残された日曜日は2回しかなく、1週間インターバルをおいた7月28日がハンガリーGPとなり、ドイツGPが入り込む余裕はなくなる。
もちろん、イギリスGPの日程には「暫定であり、変更する可能性もある」という注釈もある。つまり、ドイツGPが復活すれば、7月21日に入り、その場合はイギリスGPを1週間前にズラして、来年も再びフランスGP、オーストリアGP、イギリスGPを3週間連続開催することで対応は可能だ。
今年のドイツGPの観客動員数は、16万5000人(日曜日は7万1000人)。これは2012年の10万人(同5万5000人)、2014年の12万2000人(同6万人)を大きく上回る数字だった。まだ可能性は完全に消えてはいない。