連日、各地で熱戦が繰り広げられている高校野球。照りつける太陽の下、ほとばしる汗を飛ばしながら懸命にプレーする高校球児の姿に心打たれる人は多いだろう。
だが、この暑い時期に大会を開催するリスクを、私たちは真剣に考える必要がある。岐阜大会で7月18日、スタンドで応援していた生徒や保護者合わせて15人が熱中症の疑いで病院に運ばれた。さらに、群馬県でも高校野球の応援から戻った東京農大第二高校の生徒23人が、頭痛やしびれを訴え、病院に搬送された。(文:宮西瀬名)
熱中症になりながらプレーする選手は素晴らしいのか?
応援に駆けつけた生徒や保護者は、炎天下に長時間さらされることに慣れていないため、熱中症になったのかもしれないと予想されそうだ。ただ、そのリスクは炎天下に慣れている選手でも例外ではない。
高校野球北埼玉大会で18日、上尾高校と早大本庄高校の試合が行われた。埼玉新聞では、上尾高校の木村投手が熱中症による体調不良を引き起こし、失点してしまったと記載している。
熱中症になりながらも投げきった木村投手のガッツと投球術は素晴らしいが、これを「熱中症になりながらも力投」「暑さに負けない不屈の精神」みたいな美談にしてしまっても良いのだろうか。
愛知県の6歳の男子児童が熱中症で亡くなる事件を始め、熱中症の脅威を伝えるニュースは毎日耳に入ってくる。「高校野球=夏の風物詩」というイメージは強いが、開催時期を6月や9月に変更も視野に入れる必要があるのではないだろうか。それが難しいなら、試合開始を16時や18時などの遅い時間にしたり、ドーム球場を使用したりなどの対策を検討すべきだ。
朝日新聞は甲子園の開催時期について再検討する時期では
そうした中、14日に朝日新聞に、「運動部のみんな、熱中症『無理』『もうダメだ』の勇気を」という記事が掲載された。
記事では、運動部に所属する学生に「『それは無理』と感じた時、『もうダメだ』と体に異変を感じた時、仲間の様子がおかしい時、自分や仲間を守るために、声を上げましょう」と呼びかけており、納得させられる点は非常に多かった。
だが、朝日新聞社は甲子園大会の主催。猛暑の中、高校球児にプレーを強いている張本人と言える。そのため、この記事に対してネットでは、
「何故か真夏に過密日程で開催している全国高校野球選手権大会の主催者様が何か言ってるぞ」
「甲子園を夏から秋にしてから言おうな」
といった厳しい声が多数寄せられた。
死者が出てからでは遅い。球児やその背中を後押しする応援団の体調面を配慮する本気の議論が必要だ。朝日新聞社にはぜひ行動で示してほしい。