トップへ

木村拓哉、23年半に渡り旅を続けてきた思い出の船 レギュラーラジオ番組『ワッツ』終了に寄せて

2018年07月25日 07:02  リアルサウンド

リアルサウンド

写真

「この『ワッツ』の船は、7月27日の放送を持って降ります」


(関連:中居正広&木村拓哉は今も仲間を見守り続ける ラジオから伺える“新しい地図”への思い


 7月20日、『木村拓哉のWhat’s UP SMAP!』(TOKYO FM)が、最終回を迎えると発表された。『ワッツ』の愛称で親しまれた、この番組が始まったのは1995年1月。1997年に休止していた約半年間も含め、およそ23年半もの長期に渡って“拓哉キャプテン”とファンが旅を続けてきた思い出の船。その突然の下船に、淋しさを覚えるファンも少なくないはずだ。


 『ワッツ』は、金曜の夜23時からという時間帯もあって、木村の飾らないトークが魅力的だった。まるでクラスの男子のようなノリで話す明るい下ネタから、一人の大人の男性として語られるプライベートな話、そしてエンターテイナーとしての揺るがないプライド……ギリギリなトークにハラハラしたり、思わずクスッと笑ったり、やっぱりこの人はスターなのだと感心したり。『ワッツ』で会う“拓哉キャプテン”は、テレビで見る“木村拓哉”よりも、ずっと身近で人間的魅力を感じることができたように思う。


 また『ワッツ』は、“SMAP”の名前を残す、最後の番組でもあった。一時期は、SMAPの名前を出すのもためらわれる空気が漂った中、この番組名とSMAPの楽曲たちを毎週流し続けることで、言葉にできないメッセージをファンに送り続けていたように見える。この日も、「いつだってありのままのスタイルでみなさん、どうぞいてください。SMAPで『はじまりのうた』」と曲を紹介していた。奇しくも、「はじまりのうた」は稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾が“新しい地図”をスタートさせた2017年9月22日にも流していた曲。今回、『ワッツ』を降りるのは決して淋しいことではなく、きっと新しい何か楽しいことへつながる“はじまり”。そんな希望に満ちた曲に聞こえる。


 振り返れば、SMAPの解散報道が流れた2016年1月に、木村が真っ先にコメントを寄せたのも、この『ワッツ』だった。「いつか自分の言葉で話せるときが来たら話したい」と言っていた2016年1月15日放送回には、Coldplayの「Adventure Of A Lifetime」が流れた。この曲が、今回の最終回報告でも選曲されたのは、単なる偶然とは思えない。すべてを話せるときは、まだ先になりそうだ。人生は予測不可能で、完璧なシナリオ通りにいかない冒険なのだから。それでも、キャプテンがクルーに「信じて、ついてきてほしい」というメッセージを伝えたくて、この曲を流したのかもしれない。その想いに応えるためにも7月27日の最終回は、『ワッツ』という船に感謝して、ゴージャスなエンディングを迎えようではないか。


 「航海を終わらせるわけではありませんので。次の旅へ出るための船に乗ろうじゃないかと決めました」。8月からは毎週日曜11時30分からの25分間と、時間を改めて“再出港”するという。新しい船の名前は『FLOW』(TOKYO FM)。“漂う”という意味を持つ、この新しい船の名前に込めたのは、自然体な時間だという。昼の番組になることで、下ネタがどの程度ケアされるのかは気になるところだが、きっと木村のこと、アツい言葉、そしてラジオならではの遊び心を発揮してくれるに違いない。もちろん、選曲も風通し良くお願いしたいところだ。また、「ゲストをお迎えして一緒に時間を過ごしてもいいかな」「たまにはリスナー呼んじゃってもいいんじゃないの?」と話しているように、さらにオープンな雰囲気になりそうな予感がする『FLOW』。そのゲストに、いつか懐かしいメンバーが……そんな夢をそっと胸に秘めるのも自由だろう。地図の代わりに、天空の中心で輝く星を見つめるように。きっとそれがクルーであるファンにとって、長く先の見えない航海を続けるエネルギーになるはずだから。(文=佐藤結衣)