■400万超の歴史あるコレクションから「お気に入り」をチョイス
映画監督のウェス・アンダーソンとパートナーで作家・コスチュームデザイナーのジュマン・マルーフによる展覧会が、11月6日からオーストリア・ウィーンの美術史美術館(the Kunsthistorisches Museum)で開催される。
2人がキュレーションする展覧会のタイトルは『Spitzmaus Mummy in a Coffin and Other Treasures』。美術館が彼らに求めることは至ってシンプルだ――それは、現在展示されている作品から倉庫に眠っているものまで、400万を超える美術史美術館のコレクションをチェックし、お気に入りを選ぶこと。
美術史美術館は19世紀末にフランツ・ヨーゼフ皇帝の命によって建てられた美術館で、ハプスブルク家のコレクションを中心に膨大な数の美術作品を所蔵する。同館は世界の著名なアーティストを招いて、美術館のコレクションとコラボレーションする新たな展覧会シリーズを2012年に立ち上げており、同年にキュレーション展を行なったエド・ルシェ、2016年のエドモンド・ドゥ・ヴァールに続き、今年はウェス・アンダーソンとジュマン・マルーフが招聘された。
■ミイラからブリューゲルの名画、皇族の宝飾品まで
美術館のコレクションは、オールドマスターの絵画や古代エジプト、古代ギリシャ・ローマ、皇帝家の財宝、演劇博物館、歴史的な楽器など14種のコレクションから構成され、今回の展覧会ではさらに同館の向かいに位置するウィーン自然史博物館のコレクションも含まれるという。
アンダーソンとマルーフはこれらの長い歴史を持つ、膨大で幅広い種類の美術品を自由に選んで展覧会を作り上げることができる。つまり古代エジプトのミイラからブリューゲルやフェルメール、アルチンボルドらの名画、皇族が身に着けた宝飾品、演劇で用いられた衣装まで、あらゆるものが彼らの手によって選ばれ、会場に並ぶ可能性があるのだ。
■ウェス・アンダーソンとジュマン・マルーフの協働は過去にも
ウェス・アンダーソンの作品において、独特のカラーパレットを用い、どこかレトロな雰囲気も漂わせるセットや小道具は、代名詞の1つにもなっている。『ライフ・アクアティック』の船や、『ダージリン急行』の長距離列車、『グランド・ブダペスト・ホテル』のホテルなど、細部まで作り込まれたセットはそれ自体が美術作品のようでもある。またその美意識は『ファンタスティック Mr.FOX』や最新作『犬ヶ島』といったストップモーションアニメ作品にも見ることができる。
一方のジュマン・マルーフは日本ではあまり知られていないが、アメリカやヨーロッパにおいて映画や舞台、ファッションの分野でデザイナー・イラストレーターとして活躍している。レバノン・ベイルート生まれ、ロンドン育ちの彼女は『ムーンライズ・キングダム』の劇中に登場する本の表紙や、『グランド・ブダペスト・ホテル』のキャラクタースケッチを手掛けるなど、これまでもウェス・アンダーソンとコラボレーションしてきた。
独自の美意識と遊び心を持った両者が手掛ける初のキュレーション展。彼らは膨大なコレクションから何を選び、どのように並べるのか――展覧会の内容はまだ謎に包まれたままだが、きっと驚きに溢れた展示になるはずだ。
ウェス・アンダーソンとジュマン・マルーフによる展覧会『Spitzmaus Mummy in a Coffin and Other Treasures』は、11月6日から2019年4月28日までウィーンの美術史美術館で開催。その後、ミラノのフォンダシオン プラダに巡回する。また展覧会にあわせて図版入りのカタログも発行予定。現地に足を運べないファンにはこちらも垂涎のアイテムになりそうだ。