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スペイン人ライターのWEC便り:辛酸を舐めてきたトヨタがアロンソとともに世界の頂点に

2018年07月24日 16:41  AUTOSPORT web

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表彰台で笑顔をみせた8号車トヨタの面々
ついにやった!ル・マン24時間への4回の挑戦のうち、3回で辛酸を舐めてきたトヨタは、世界でも最も名高い耐久レースの勝者となったのだ。2014年、TS040は最高のマシンだったものの、不運と信頼性の不足のせいで勝利は叶わなかった。

 2015年は、マシンが充分強力なパフォーマンスを出せなかった。2016年は勝利に手が届いていたのに最終的に悲痛な終わりを迎え、2017年には3台のマシンを参戦させるという、大きな試みに挑んだチームの希望は打ち砕かれた。時に勝利は二度と訪れないのではないかとも思われたが、2018年のトヨタはル・マンで優勝できることを証明しただけでなく、もし以前のライバルチームがいたとしたら彼らに勝っていたであろうことも証明した。

「我々のチームにフェルナンド・アロンソは必要ない」と昨年トヨタの関係者は私に話した。トヨタにはバランスのとれたチームがあり、2018年のル・マンに取り組む上で変化は必要ないということを確信していた。

 しかし、2度のF1世界チャンピオンであるアロンソを起用するチャンスが訪れ、彼が関心を示すと、彼を雇う理由を考えることが問題になった。結局のところ、トヨタがアロンソを“必要としていなかった”のはおそらく事実だろうが、彼を起用することで得た利点は、非常に速くて信頼性のあるドライバーを8号車に乗せる以上のものになった。F1のような別のハイブリッドテクノロジーシリーズに取り組むことは、チームにとって非常に有用な仕事の方法論をもたらした。

 確かに、この数年と違って、2018年はトヨタに強力なライバルはいなかった。レベリオン・レーシングはアウディでもポルシェでもない。しかし今シーズンのWECとル・マン24時間に向けた準備は素晴らしいものだった。

 今年のサルト・サーキットでのル・マン24時間は、“地味な”レースになると予想されていたものの、それでもそこには気づかされることが多くあった。何よりもまず、アロンソのパフォーマンスは見事だった。ルーキーとして、彼はおそらくトヨタの中で最高のドライバーだった。レースにおける彼の40周のベストラップは、平均ラップタイムで他の者を大きく引き離していたし、周回数を増やしても彼の優位性はそのままだろう。彼の夜間スティントはこの世のものとは思えなかった。彼は7号車が8号車に対して持っていた2分のアドバンテージを奪うことができたのだ。

 中嶋一貴が7号車を追い抜き、それからは2台のトヨタTS050ハイブリッドマシン同士の正々堂々とした戦いになった。セーフティカーが果たした役割、8号車のより速いペース、それにレース終盤の小林可夢偉のミスが、結果を決定した。

 そのため24時間のレースの後、セバスチャン・ブエミ、中嶋一貴、フェルナンド・アロンソが今年の伝説的レースの優勝者となったのだ。2位はマイク・コンウェイ、小林可夢偉、ホセ-マリア・ロペスだった。この結果により、中嶋は日本のチームから日本車で優勝した初の日本人ドライバーとなった。過去数年にわたる苦しみを経て、フィニッシュラインを通過した後の彼の笑顔はまるで子供のようだった。一方、フェルナンド・アロンソは、1972年のグラハム・ヒル以来となる、ル・マンで優勝したたった5人のF1世界チャンピオンのひとりとなった。

 とはいえ、2018年のトヨタのル・マンへの挑戦にミスがなかったわけではない。セバスチャン・ブエミは“スローゾーン”で速度を出し過ぎ、8号車はペナルティを受けた。その後もレース中に再び両マシンに同ペナルティが科されることになった。そして小林可夢偉がレース終盤で給油のタイミングを逸したことは、良くないミスだったかもしれないが、今年のレースで1位と2位を獲得したチームには許されないことだろう。

 幸運にもライバルたちはずっと離れており、ベストリザルトが脅かされることはなかった。おそらくこのことがチームをリラックスさせたのだろう。アウディやポルシェがコースにいたら不可能なことだ。だが、肝に命じておくこと、改善すべきことがひとつあるとすれば、それは小さなことを改めるということだ。カイゼンの哲学は最高だ。2018年のル・マンは最高だった。2019年のル・マンはさらに良くなるはずだ。だがその前に、シルバーストン、富士、上海、セブリング、スパ・フランコルシャンでのレースがある。

 いずれにせよ、日本のモータースポーツ界に向けたル・マン24時間前後のニュースの重要性について話すとしたら、留意すべきことは多々あった。まず、ハイパーカースタイルのマシン向けの新たなクラス“GTプロトタイプ”がLMP1に取って代わり、WECのトップクラスとなることが確認された。これらの新型マシンは2020年/21年シーズンに導入される。

 このクラスはトヨタを引き込みシリーズに残留させることになるかもしれない...。そして、レッドブルがホンダと契約したことがついに確認された。ホンダは2019年F1シーズンからレッドブルのエンジン供給者となる。レースに関して言えば間違いなく、日本はますます世界の注目の的になってきている。最後に、私はばかげた小さな事実を見つけて笑わずにはいられなかった。トヨタは第86回目のル・マン24時間で初優勝を飾った。ハチロクだ!