Gazoo Racing 86/BRZレース第5戦が7月21~22日に富士スピードウェイで開催され、プロフェッショナルシリーズでは服部尚貴(OTG DL 86)がポールポジションを奪うも、佐々木雅弘(小倉クラッチREVO 86 BS)が逆転して2連勝。クラブマンシリーズでは庄司雄磨(OTG DL 86)がポール・トゥ・ウィンで今季2勝目をマークした。
ここ数週間は全国的に連日、猛暑が伝えられており、それは富士スピードウェイも例外ではなく、各ドライバー、チームは厳しい暑さとも戦いを強いられた。
この酷暑の影響か、ダンロップコーナーの路面舗装が剥がれるアクシデントも発生。路面はもちろん補修されたが、スリックタイヤを装着するハイパワー車両の周回には耐え切れないとして、併催のブランパンGTシリーズ・アジアなどは、ダンロップコーナー先のショートカットが持つ居られることになった。また、クールスーツの装着については“許可”から“推奨”へ格上げされている。
ちなみに、昨年までクラブマンシリーズを戦っていた某ドライバーは、筆者の知る限り、この週末だけで少なくとも9セットのクールスーツを販売できたとか……。
レースについては、プロフェッショナルシリーズの予選が他大会よりも遅いスタートだったこと、そして上空を黒い雲がおおったことで一気に気温が下がり、コンディションを大きく変化させていた。
今回も計測開始と同時にアタックする者もいれば、終了間際に行う者もいて、それぞれではあったが、先組のトップは服部尚貴(OTG DL 86)で2分5秒177をマーク、これに小河諒(神奈川トヨタ☆DTEC 86R)、阪口良平(大阪トヨタレーシング86 BS)が、まずは続くことに。
後組では谷口信輝(KTMS 86)が先頭でコースイン。その後に続いたのは佐々木、織戸学(サミー☆K-one☆MAX 86)、近藤翼(神奈川トヨタ☆DTEC 86R)といった面々。このあたりが、どう食い込んでくるのか注目された。
まずは谷口が小河に続き、その谷口のスリップストリームを使えたという、佐々木が服部に次ぐ2番手に。そして近藤も谷口に続いたことで、服部が逃げ切ってポールポジションを獲得して以下、佐々木、小河、谷口、近藤、阪口という順番となった。
「今週はずっといいところにいて、予選も自分としては上出来なタイムというか、ノーミスでできたので良かった。もう少し暑い時の方がバランス良かったんだけど、気にしたらもう終わりだから、1周しかないのでベストを尽くすつもりで行ったら、思いどおりになったというか」と語る服部のポールポジション獲得は、2016年の第1戦・もてぎ以来となった。
日曜日に行われた決勝レースは、また猛暑のなかでの戦いに。上位陣は揃ってスタートを決めて、オープニングラップはいつものように一列大渋滞。
そのなかで近藤が谷口をかわして、4番手に浮上する。オープニングラップを終えた時点で、トップの服部と2番手の佐々木、そして3番手の小河の間隔は、それぞれコンマ5秒。しばらく様子を見るかと思われたものの、早々に仕掛けたのが佐々木だった。2周目のダンロップコーナーで服部のインを刺し、トップ浮上に成功する。続いて動いたのが近藤で、4周目の最終コーナーで小河を抜いて3番手に。
その後も近藤と小河のチーム内抗争は続いたものの、その激しさゆえにトップの2台を逃してしまう。さらにプレッシャーをかけられる存在が服部だけとなったこともあり、レース折り返しの5周目には、佐々木も逃げ始めて1秒3の差をつけるまでとなった。だが、佐々木のリードもそれがピークになってしまう。
「ミッションにトラブルがあって。2速と3速の間のニュートラルのところにポンっと入っちゃって、2回も。それで貯金ゼロになっちゃっいました。無理して3速でやっているうちに、今度はタイヤがきつくなってきて」と佐々木。
7周目からは完全なテール・トゥ・ノーズ状態の戦いのなか、最後はコンマ4秒差ながらも服部を抑え抜いて、佐々木が2連勝を飾ることとなった。
「ここで勝てて良かった。この後、ダンロップがすごいタイヤを出してくるので、ここで追い着いておかないと後半戦戦えなくなってしまうから。それにしても理想的な順位になってくれました」と佐々木。
というのも谷口が5位フィニッシュで、そして「どうにもペースが上がらなかったね。僕のクルマは直線が遅いから……」と語る織戸が、11位に終わってノーポイント。
その結果、織戸はランキングトップを保ったものの、佐々木が2位に上がって2ポイント差となり、さらに1ポイント差で谷口が続く展開となった。
一方、史上最多110台のエントリーを集めたクラブマンシリーズは、この“うれしい誤算”によって予選を3組に分けることに。ただし、参戦台数の多さから予選落ちも発生する状況となった。
まず1組の予選トップは、ポイントリーダーの神谷裕幸(N中部GRGミッドレスDL 86)だったが、2組トップの庄司雄磨(OTG DL 86)のタイムが上回る。
3組トップは松原怜史(GR-G神戸垂水86 BS)ながら、庄司と神谷のタイムに勝ることはできず、その結果、庄司がポールポジションを獲得して、またグリッドは2組~1組~3組の順に並べられることとなった。
「今週ずっと調子が良くて、チームが本当にいいクルマを用意してくれたので、僕はただ走らせただけでも、うまくまとめられたと思います。自信を持って予選には挑めましたし、明日の決勝はぶっちぎります。明日は吉本さんもくるので、下手なレースはできないので!」と庄司。
庄司が語る「吉本さん」とは、師匠格の吉本大樹。その吉本は自身のSNSで「(庄司が)決勝でヘタこいたらモヒカンの刑」と投稿し、庄司にプレッシャーをかけていた。
色んな意味でポールポジション。決勝ヘタこいたらモヒカンの刑。#86BRZ #クラブマン #OTGmotorsports #HYspeed #ドラニック #庄司雄磨 pic.twitter.com/dS7UuS21nn— Hiroki Yoshimoto (@YoshimotoHiroki) 2018年7月22日
そのプレッシャーに気圧されたか、決勝では庄司がスタートに出遅れてしまい、1コーナーでは神谷が前に出たが、すかさずコカ・コーラコーナーで抜き返してこと無きを得る。
そこから早々とスパートをかけて、オープニングラップ終了時点では、神谷にほぼ1秒の差をつけることとなった。
一方、2番手の神谷はペースが今ひとつ。2周目のコカ・コーラコーナーで水谷大介(ネッツ東京レーシング86)の先行を許した後、「水温が上がりすぎていて、なんかペースが上がらなかった」と、徐々に順位を落とすこととなる。
3周目には松原が3番手に浮上し、これに続いていたのが7番手スタートだった橋本洋平(カーウォッチ86 BS revo)だった。
猛烈な暑さもあって、全体的にタイムが落ち気味のなか、ひとりペースを保ったまま周回を重ねていたのが橋本だった。4周目には松原を抜いて、その時点で1秒半あった水谷との差を徐々に詰めていく。
そして最終ラップの1コーナーで、ついに2番手に浮上!「橋本選手が上がってきたというより、僕が落ちたという感じ」と水谷もお手上げ状態。
そんな後続の激しいバトルを尻目に、庄司はひとり逃げて今季2勝目をマーク。
「スタートは失敗しました、(エンジンの)回転が低すぎて。トップを奪われた瞬間、モヒカンが頭をよぎりました(苦笑)」と庄司。
「すぐ抜き返せたので、良かったんですが。僕が走っている間にレギュレーションが変わっていて『勝つだけじゃなく、ファステストラップも取らんとモヒカンに』って吉本さんが。取れていて良かったです」
一方、2位を得た橋本は「路面温度がすごい高いので、タイヤをいたわって走っていたのが良かったのかも。スタートも良くて、いきなり3~4台抜けたし。こんな追い上げるレースは今まで一番かも!」と満足そうに語っていた。
また、この勝利で庄司は2ポイントさながら、神谷を上回ってランキングのトップに浮上。
「次の十勝はふたつとも勝って、『タイトルほぼ決定!』ぐらいにしたい。走ったことはないんですが、オートポリスもやっぱり走ったことなかったのに、勝てたので」と庄司。有言実行なるか、大いに注目されるところだ。