2018年07月22日 10:12 弁護士ドットコム
全国的に厳しい暑さとなる中、旅先に連れて行った飼い犬を車内に残したところ、死んでしまったーー。そんな内容の投稿がSNS上であったとして、物議をかもしている。ネット上では、「動物虐待にあたるのではないか」という批判も少なくない。
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元の投稿はすでに削除されているが、拡散されている情報によると、飼い主は7月中旬、6匹の飼い犬(チワワ)を連れて、東海地方を旅行した。その際、不注意から、車内に犬たちを放置してしまったところ、すべて死んでしまったという。「熱中症」とみられる。
飼い主はSNS上で「後悔してもしきれない」といったメッセージとともに、犬の死体を並べて撮影した写真も投稿していたようだ。こうしたことから、一部ネット上では「動物を飼う資格がない」「写真を載せる神経がわからない」という声があがっている。
この暑さの中、小中高生たちが、学校行事や部活動で、熱中症を訴えて、緊急搬送されるケースが相次いでいる。獣医師の原野亮氏(ホームズ動物往診所)は、弁護士ドットコムニュースの取材に対して「犬は、人間よりも熱中症になりやすく、暑い時期に車内に放置するようなことは、絶対にしないでください」と話す。どんなときになりやすいのだろうか。
「基本的には、動物も人間と同じで、高温多湿で風通しが悪いところや、エアコンのついていない締め切った部屋、車内などで、長時間いたり、そういう場所で激しい(興奮するような)運動をしたときです。30度を超えるようなときに散歩する場合も気をつけてください。直射日光だけでなく、地面からの照り返しもあります。犬は、人間よりも地面に近いので影響を受けやすいです」(原野氏)
原野氏によると、犬は人間とくらべて汗腺が発達していないので、発汗による体温調整がほとんどできない。主にパンティング(口をあけてハァハァすること)によって体温を調節している。熱中症になると、パンティングがひどくなったり、意識が低下したり、嘔吐や下痢を起こしたりすることがあり、高体温が持続すれば多くの臓器が異常をきたし、死に至ったり、後遺症が残ってしまうこともあるという。
原野氏はこれまでも、熱中症となったパグやゴールデンレトリバーを診たことがある。「犬は、自分から症状を訴えられません。先ほど述べたような環境をつくらない、そういう場所に連れていかないことが大事です。散歩する場合も、毛が多い犬種は事前にトリミングしたり、激しい運動させず、こまめに水分補給させたり、日陰で休ませたりしてください」(原野氏)
それでは、犬を車内に放置した場合、虐待にあたるのだろうか。動物愛護法には、次のような条文がある。
「愛護動物に対し、みだりに、給餌若しくは給水をやめ、酷使し、又はその健康及び安全を保持することが困難な場所に拘束することにより衰弱させること、・・・(中略)・・・その他の虐待を行った者は、100万円以下の罰金に処する」(動物愛護法44条2項)
ここでいう「愛護動物」とは、(1)牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる、(2)(1)以外で、人が専有している哺乳類、鳥類または爬虫類に属する動物ーーとされている(同44条4項)。動物愛護法にくわしい島昭宏弁護士は次のように解説する。
「今回のケースでは、死亡という結果が発生しています。そのため、その原因が車内に放置したことだということになれば、虐待にあたります。死亡が『たまたまそのタイミングだった』というだけで、原因がほかにあるという場合は違いますが、今回のケースでは、飼い主が認めているように思われます」
ただ、仮に飼い主が「この犬は元々病気だった」「車内放置が原因でない」と主張した場合、あるいは「まさかそんなことになると思わなかった」と反論した場合は、犬を車内に入れていたとき、(1)どれくらいの気温だったか、(2)何時間だったかーーということが客観的なポイントになるという。
(弁護士ドットコムニュース)