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浅香航大、若手屈指のバイプレイヤーへ 『グッド・ドクター』などで見せる“敵役”のハマりっぷり

2018年07月21日 10:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 現在『グッド・ドクター』(フジテレビ系)や『バカボンのパパよりバカなパパ』(NHK総合)に出演中の浅香航大。どのクールの作品にもコンスタントに呼ばれる俳優の1人だ。


参考:志尊淳×浅香航大×小越勇輝×堀井新太が語る、『ドルメンX』が描く“芸能界のリアル”


 年齢は現在25歳だが、ドラマで演じる役は、それより少し上の印象を受ける。特に『宮本から君へ』(テレビ東京系)で演じた益戸という役は、主人公・宮本(池松壮亮)とはライバル関係にある会社の営業マンで、どちらかというと新人の宮本の直接のライバルというよりは、宮本の先輩である神保(松山ケンイチ)のライバルという感もあった。


 この益戸が、とにかく嫌な奴だった。取引先の女性社員や部長にも卒なくコミュニケーションできるのだが、ライバル会社の宮本や神保にはイヤミたっぷりで、時にはその取引先で宮本と衝突したりもする。


 しかし、書いていて思うのだが、営業マンはお互いに自社のために取引先と円満な関係を築きたいものだし、別に女性社員の覚えが良くても決して悪いことではない。益戸のやっていることも、宮本の視点から見るから卑劣なだけで、益戸には益戸のやり方があるだけだ。


 そのことについて、浅香も本作の記者会見で、「宮本という青くさい異端児が現れて”負けたくない”という気持ちを持つことと、益戸なりの正義を信じて演じきることを心掛けました」と語っている。『宮本から君へ』は、サラリーマンが、ひたむきに仕事にかける様に説得力があり、ときに暑苦しいくらいに描かれていたが、それは、宮本だけでなく、松山演じる神保や、浅香演じる益戸、そのほかのキャスト全員から伝わってきたし、それが本作が素晴らしいと思える所以であった。


 しかし、浅香は、イヤミな役というものが非常に多い。現在放送中の『グッド・ドクター』でも、自閉症でサヴァン症候群の主人公・新堂湊(山崎賢人)が、病院のルールを乱し、仕事を増やしたからということで、襟もとをつかんで壁に押し付け脅したりもする。これについて、浅香本人は自身のTwitterでも「自分の役ちょっと嫌な奴ですが、少しでも湊が愛される起爆剤になれれば」と語っている。『宮本から君へ』のときは、自分の役にも正義があると解釈していたが、『グッド・ドクター』では、また違う役割に徹しているのがわかる。


 個人的には、浅香を初めて認識したのは、映画『桐島、部活やめるってよ』だったが、実際に注目したのは『マッサン』(NHK総合)であった。短い出演期間だったが、父親との関係で屈折したところもあるが、その中身は純粋で、彼があるやりとりをきっかけに堰を切ったように泣きじゃくるシーンにはぐっときた。朝ドラに出演して注目されたときは、ほかの朝ドラ出身の俳優のように、正統派の路線で行くのかと思っていたが、クセのある役を難なく演じる、若手きってのバイプレイヤーになりつつあるのが面白い。


 そんな存在として頭角を現したのは、個人的には岡田惠和脚本の『奇跡の人』(NHK総合)が大きかったのではないかと思っている。また、二度目の朝ドラで岡田惠和脚本の『ひよっこ』(NHK総合)では、もはや、イケメン俳優の登竜門的な扱いで、ヒロインの気になる存在ではなく、ヒロインの住むあかね荘の住人の漫画家として、視聴者をくすっと笑わせたりほっとさせたりする役割を岡山天音とともに担っていた。


 最近では、『ドルメンX』(日本テレビ系)で演じた熱血系ムードメーカーのイチイも記憶に新しい。イチイは、劇中で「ジャノン・スーパーボーイ・コンテスト」に応募し、仲間の中で自分だけが選考に落ちてしまったことで、仲間に対して宇宙人にはありえない感情である嫉妬を初めて覚える。ドラマの前半の彼の演技で、この作品は設定は宇宙人で一見ありえないように見えるが、葛藤はリアルなのだと思わせた。


 現在、若手俳優の数は非常に多い。その中でも、今の浅香はクセのある敵役のバリエーションがいくらでもあるということで“呼ばれる”俳優となっているが、それはまだ持ち味のひとつが見えていることでしかないように思う。そこからまだまだ、さまざまな顔を見せてくれるポテンシャルを秘めているのではないだろうか。


※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記


(西森路代)