立憲民主党、国民民主党など野党6党派は7月20日、内閣不信任案を提出した。立憲民主党の枝野幸男代表は同日午後、衆議院本会議で不信任案の趣旨説明を行い、その中で「私こそ保守本流」と発言し、話題を呼んでいる。
枝野氏は不信任案の説明の中で、「立憲主義とは、どんな権力も憲法というルールに基づいて運用されなければならないという考え方であり、近代社会の大前提であります。憲法とはまさに歴史と苦難の中から先人たちが積み重ねてきた社会の大前提となるべきルール」と説明した。立憲主義では、先人たちが苦労して作り上げてきた憲法を重んじる。それは保守主義と同じだという。
「まさに立憲主義も保守主義も同じ考え方でありますので、私こそが保守本流であるということを自信を持って皆様にお訴えしているところであります」
「持統天皇以来の歴史を一顧だにしない人々に保守と名乗ってほしくありません」
枝野氏は、同日午後に成立が見込まれている「カジノ法案」についても手厳しく批判した。その中で「保守」の概念を問い直す場面があった。
「7世紀末、持統天皇の時代に、すごろく禁止令が発令されました。以来、我が国は1000年を超える期間、賭博は違法であるという法制度の下で歴史と伝統を積み重ねてきました。(中略)1000年以上に渡って違法とされてきたものを使って、利益を上げて経済を成長させる。その事自体がみっともない政策ではないですか。持統天皇以来の歴史を一顧だにせず、このような馬鹿げた制度を強行する人たちに保守と名乗ってほしくありません」
カジノ法案を推進してきた与党・自民党は、世間一般では保守だと考えられている。しかし賭博を禁止してきた日本の伝統を蔑ろにする人々は、保守ではないというのが枝野氏の主張だ。
「謙虚な姿勢で一歩ずつ世の中を良くしていくのが保守」
枝野氏は、自民党が法案の採決を強行したことも批判した。「反対意見を封殺し、自分が正しいと信じて邁進する」のは保守思想が否定する考え方だという。
「保守の本質は、人間は不完全な存在であるという謙虚な人間観であります。(中略)こうした謙虚な人間観に基づき、今生きている私たちの判断だけでは間違えることがある。したがって人類が長年に渡って積み重ねてきた歴史に謙虚に向き合い、人類が積み重ねてきた叡智を活かしながら、それを改善していくにあたっても間違っているのではないかという謙虚な姿勢を持ち、そして自らを省みながら一歩ずつ世の中を良くしていく。これが保守という概念の本質であります」
枝野氏は、以前から憲法に関する議論で保守を自称していたが、今回は国会での発言ということでネットでも話題に。保守を自称する人々からは「枝野が保守というのはない」と反発が相次いだ。
一方、枝野氏を支持する側からは、「名演説」「持統天皇まで遡って説教されたら明治で思考が止まってるアホな保守はぐうの音も出ない」などと称賛する人々も多い。ほかにも、「なんとなく保守を名乗っていたネトウヨ議員どもに通じるのか」といった声が上がっていた。
枝野氏は20日夕方、「本日の衆議院本会議における安倍内閣不信任決議案提案理由説明演説に対し、ネット中継をご覧いただいた皆さんなどから、Twitterを通じて多くの激励をいただき、ありがとうございます」とツイートしていた。
なお、立憲民主、国民民主、無所属の会、共産、自由、社民の野党5党1会派が提出した内閣不信任案は、同日午後に否決されている。