現役日本人F1エンジニアとして、ハースF1でチーフを務める小松礼雄エンジニア。F1速報サイトで好評連載中のコラム、今回はF1第8戦フランスGP~第10戦イギリスGPまでの3連戦を一挙ふり返り。現在のF1で起きている真相と、現場エンジニアの本音を読者のみなさまにお届けします。
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F1史上初の3連戦が終わりました。カナダGPで投入したアップデートの効果がうまく発揮され、3レースを通してマシンのパフォーマンスはとても良かったです。トップ3チームを除くと、3戦すべてでQ3に2台進出しているのは僕らだけなので、ようやく中団グループのトップに立てたのではないかなと思っています。
今のマシンで“普通”に予選と決勝を走ることができれば7、8位でフィニッシュすることは十分に可能です。フランスGPでもケビン(・マグヌッセン)が6位でフィニッシュしていますが、それをやっとチームとして2台で実践できたのがオーストリアGPです。
予選でロマン(・グロージャン)がレッドブルの(ダニエル・)リカルドを抑えて6番手を獲得したのにはさすがに驚きましたけど、ケビンもマシンの実力どおりの速さを発揮して8番手に入りました。
そして、レースではフェラーリ、メルセデス、レッドブルと勝負するのはさすがに無理ですが、それ以外のチームには迫られることなく淡々と走り、(ルイス・)ハミルトン、(バルテリ・)ボッタス、リカルドのリタイアが重なって、4、5位ダブル入賞という素晴らしい結果に終わったわけです。
でも、今のハースのマシンを持ってすれば、この結果をつねに出していなければいけないんです。ですから、やっと今季9戦目で出すべき結果を出せてホットしました。もちろん、とてもうれしかったですけど、ようやくやるべきことができたという気持ちが強かったです。
このまま波に乗っていきたいところでしたが、イギリスGPではロマンがFP1でいきなりクラッシュ。ダメージが大きく、シャシー交換となってしまったのでFP1の残り時間とFP2を、ケビン1台で走らないといけなくなりました。
当然、予定どおりのプログラムをすべてケビンだけでこなすことはできないので、クルマのセットアップの煮詰めやタイヤの使い方などやりきれないことが結構残ってしまいました。
それでも金曜の夜に見直して、FP3でちょっと実験をして、少なくとも方向性が確実に見えたので、予選でさらに修正をかけて、なんとか7、8番手を獲得することができました。たとえ出だしが悪くても、居るべき場所までマシンを持ってこられたのは、チーム力が成長している証だと思うので、それ自体は良かったです。
しかし、決勝では予想だにしなかった出来事が待ち受けていました。スタート後のターン3への進入でフロントをロックアップしたロマンが、なんとチームメイトのケビンに突っ込んでいったんです……。絶対にやってはいけない、あり得ないミスでした。
繰り返しになりますが、我々のチャレンジは中団グループのトップに立つことで、今のマシンが速いことはドライバー達も十分に理解しているわけです。だから、1周目はポジションをキープしてマシンやタイヤを傷めることなく、7、8番手で戻ってくればいいんです。
ですから、ロックアップしてチームメイトに突っ込んでしまうようなリスクを冒す必要性はまったくないんです。もちろん、同じ場所でフェラーリのキミ(ライコネン)もフロントをロックアップしていましたから、あの場所はちょっと路面のグリップが低かったわけです。でも、それも含めて上手くやるのが彼らの仕事なので、あまり言い訳にはなりません。
■グロージャンの心理面でのプレッシャー
■もっとも優秀なセンサーはドライバー
■夏休み前後、シーズン中盤戦の勝負どころ
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