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清水尋也、“陰”のイメージ封印して新境地を見せるか 初主演作『インベスターZ』でコメディに挑戦

2018年07月20日 10:02  リアルサウンド

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 今年19歳になったばかり。早くから独自路線を突き進む俳優・清水尋也が、現在放送中の『インベスターZ』(テレビ東京系)で連続ドラマ初主演を務めている。投資に没頭していく高校生たちを実在の企業や人物を登場させながら、コメディ色たっぷりに描く、雑誌『モーニング』に連載されていたコミックがベースの異色経済学園ドラマだ。これまでのイメージを覆す役柄に挑戦中の清水とは、どんな役者なのか。


 同じく俳優の兄・清水尚弥の影響で演技の道に入った清水は、2012年に俳優デビュー。14年に公開された中島哲也監督の『渇き。』と、翌年公開された成島出監督による2部作『ソロモンの偽証』の出演で、映画ファンの間で瞬く間に注目を浴びる。


 『渇き。』では壮絶ないじめを受ける“ボク”を体当たりで演じ、一方の『ソロモンの偽証』ではクラスメイトに恐怖を与える不良役という真逆の役を、リアリティを伴って演じきった。もともと持っていた清水の才能が、中島、成島という鬼才・ベテラン監督のしごきによって強い刺激を受け、一層広がったといえる。


 続く瀬々敬久監督の『ストレイヤーズ・クロニクル』では、自分の殻に閉じこもった中学生の超能力者を演じて、SFアクションという全く違うジャンルに踏み出す。そして16年と今年に公開された、小泉徳宏監督による青春映画『ちはやふる』3部作で、広瀬すず扮する主人公の千早が競技かるたで対戦する、北央高校を率いるドSの須藤を好演して強い印象を残した。


 内に向かうにせよ、外に向かうにせよ、攻撃性を感じさせる役柄が多い清水の魅力は(須藤はSとはいえ、青春ものらしく、攻撃というよりは熱さが強いが)、長身に細身の身体全体に影をまとった空気感と、他の若手俳優にはない奥に光を滲ませる瞳だ。清水自身は、自分の魅力は「死んだような目」だと、なかなかおもしろい公言をしている。しかし清水の瞳は、弱さから鋭さまで、極端な色合いを滲ませることができる、むしろ激しいリアルを内包している。


 そして、『ちはやふる』の広瀬すずと、打って変わって初恋の切なさを感じさせた、水田伸生演出、坂元裕二脚本のタッグによるドラマ『anone』(日本テレビ系)で、一般への認知度をグッと上げることになる。ここで清水は“彦星くん”という病を患い入院中の青年役で登場。前半、ほぼ姿を見せずに、声のみでヒロインのハリカと心を通わせていった。


 つまり、清水の強みである影をまとった容姿と、瞳を封印したのだ。彦星くんの声には穏やかさ、やさしさ、寂しさといった感情が溢れており、“声”のみで、心の機微を伝えるという難題をクリアしてみせ、改めてその実力の深さを見せた。


 そして現在は2本のドラマに出演中。若手女優がズラリ揃った『チア☆ダン』(TBS系)で見せていくだろう野球部青年の変化にも期待だが、やはり注目はドラマ初主演を果たしている『インベスターZ』だ。


 デフォルメされた世界観のなかで、投資についてがっつり本格的に描写していくドラマそのものにも興味津々だが、気になるのは、本作がコメディ色に満ちていて、その主演を清水が務める点だ。清水の演技力は、これまでの実績からもよく分かる。しかしコメディとなると未知の分野である。


 すでに放送された初回では、「投資部」に入部するハメになった主人公・財前の、あたふたぶりを、頑張って演じている感が少しばかり否めなかった。しかし、早見あかりや柾木玲弥といったこれまでにも振り切ったコメディを見せてきている共演者たちからの刺激も受けて、初めてのコメディにもその才能を開花させていくはずだ。


  “陰”を感じさせることにおいて、同世代の役者の中で突出した存在といっていい清水。その強みを押して安全圏に進むのではなく、『anone』で切なさを繊細に表現し、『インベスターZ』ではパワフルな“陽”を得んとしている。まだ19歳。清水尋也がどんな役者なのか、測ることはできない。(文=望月ふみ)