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山本舞香が表現する“思春期の闇”の上手さ 『チア☆ダン』では心を閉ざした不登校児役で注目

2018年07月20日 08:52  リアルサウンド

リアルサウンド

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 『ウォーターボーイズ』(フジテレビ系)や『表参道高校合唱部!』(TBS系)のような高校や部活が舞台の青春ドラマは、これからのドラマ界を担う若手俳優たちの見本市として、世代の象徴を示す役割を果たしてきた。7月13日からスタートした土屋太鳳主演の『チア☆ダン』(TBS系)も正にそれに当たる作品。広瀬すずが出演した映画『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』(2017年)から9年後を描いた本作は、チアダンス部の青春物語という映画の世界観を引き継ぎ、石井杏奈や佐久間由衣といった今をときめく若手女優やモデルが集結している。


参考:土屋太鳳『チアダン』は“ザ・部活ドラマ”と呼ぶにふさわしい 第1話は映画との架け橋的役割に


 その中でも、数々のCMやドラマのヒロインを経験し、『チア☆ダン』では不登校児で心を閉ざした役を演じる山本舞香について注目してみたい。本作で山本が演じる柴田茉希は、藤谷わかば(土屋太鳳)たちと同じ福井西高校の高校2年生。中学の頃に起きたある出来事がきっかけで人と距離を置くようになり、不登校気味に。そんな茉希は孤独に路上でヒップホップダンスを踊っていたところ、わかばたちにチア部にスカウトされる。まだ第1話の段階ではわかばたちに心を閉ざし、チア部に入ることを無言で拒否している。本作の中でもクールでアウトローな役柄だ。


 そんな茉希を演じる山本は、ローティーン向けファッション雑誌『ニコラ』の専属モデルとして活躍をするほど誰もが認める美少女なだけあり、ドラマ『南くんの恋人~my little lover』(2015年/フジテレビ)や劇場映画初主演『桜ノ雨』(2016年)などの純情なヒロインを演じることも多かった。


 しかし、実はアクションも華麗に熟すのが彼女の特徴でもあり、小学校1年生から習っているという空手は黒帯を締めるほどの腕前の持ち主だ。6年生の時に県大会優勝経験のある彼女は、映画『Zアイランド』(2015年)では本格的なアクションに挑戦している。しかし、それより前のネット配信ショートムービー『通学ダッシュ!』(2013年)では、学校に遅刻しないよう商店街のあらゆる障害を抜群の身体能力を活かし、くぐり抜け、最後は綺麗な回し蹴りを決める姿を見せている。これは、可愛さとアクションが融合した山本の魅力が全て詰まったような作品で、彼女のキャラクターは2013年には既に出来上がっていたようにも思う。


 一方、山本の真の魅力は、その美少女の容姿だからこそ滲み出てくるクールさにもあるようにも思う。目力のある山本の表情は、世の中に虚勢をはっているような、今どきの女子高生が抱える思春期のちょっとした闇を表現するのが実に上手い。ドラマ『まほろ駅前番外地』(2013年/テレビ東京)では、女子高生の義父殺人事件の後に行方不明となった女子高生役を務めたことがある。彼女が演じた役柄の経緯は警察がさらっと話す程度なのだが、必死に探していた友達と逃亡先で再会した時の安堵の表情や、闇社会と縁を切る選択を選んだ時の覚悟を決めた真っ直ぐで強い目の輝きは、演技力だけではカバーしきれない天賦の才能を感じた。


 さらに、2017年の映画『ひるなかの流星』では、表は女子力高い女の子だが実は負けず嫌いで、恋敵のヒロイン・すずめ(永野芽郁)に最初は嫉妬しいじめるも、すずめが田舎者で純粋すぎるがゆえに面倒を見るかのように友達になっていくという心の変化を巧みに演じ、ヒロインよりも女子たちの共感を得ていた。


 山本は、自身の性格について、内気ではなく言いたいことは言うし好き嫌いはハッキリしているタイプだとMOVIE Collectionのインタビューなどで答えている。だからこそ、自分に近い性格であるクールな役が似合うのではないだろうか。また、クールで強気な役がハマっているからこそ、デレた時に魅せる、見るものの心をグッと掴む表情も魅力的。山本は若手女優の中では最強のツンデレ役者かもしれない。


 7月20日放送の第2話で茉希は、部の活動に必要な残り2人を集めることに奔走する汐里(石井杏奈)から、終業式で披露するダンスを見に来てほしいと伝えられる。茉希は彼女たちの一生懸命さに胸を打たれ、心が動いていくことが予想されるが、スポ根チームもののドラマにおいて、心を閉ざすアウトロー的なキャラが、徐々に仲間たちに心を開いていき、そして力強い味方になるという一連の流れは、視聴者が観ていて微笑ましくなる筆者も大好きな展開だったりする。山本はそうした影があり気が強い女子高生役が実に巧い女優なだけに、ドラマ序盤の大事な掴みとして、視聴者の興味を惹き付ける活躍が期待できる。今作は映画のリメイクではないが、映画版でヒップホップが得意で、笑うことが苦手なクールキャラの紀藤唯(山崎紘菜)とチームのポジションで比較して観るのも面白い。(本 手)